ヨコの動きはナシ!

が、ガールズケイリンの基本ルールだが、脚力が拮抗(きっこう)したギリギリの勝負になると、どうしてもスレスレの動きは出てくる。最近は、強い自力型が仕掛けると、後ろで3人ぐらいが並走になるシーンも良く見られる。

中でも1番ヒヤリとするのが最終4角から直線にかけて。まくりや差し込みを阻止しようと、前にいる選手がゴールに向かって外側にスライスしていくケースだ。当事者にそこまでの悪意はなく、必死なだけなのだが、直線部分はカント(斜度)が浅いため、外の選手が金網に突っ込みそうに思えて怖い。

10月函館決勝は、柳原真緒(21=福井)のこの動きで後続の高木真備と内村舞織が落車した。競輪選手は男子だけでなく女子もケガに強い。中8日で伊東ガールズドリームトーナメントを走り、決勝まで進んだ2人は立派だった。

伊東前検日の内村舞織(左)は、児玉碧衣にアドバイスを仰ぎながらローラーで体の状態を入念にチェックしていた(撮影・松井律)
伊東前検日の内村舞織(左)は、児玉碧衣にアドバイスを仰ぎながらローラーで体の状態を入念にチェックしていた(撮影・松井律)

内村は「競輪選手って痛くても痛いって言う人がいないから」と気丈に振る舞っていた。

高木は「キレが微妙だけど、走るからには負けられない」と芯の強さを発揮した。二人とも歩いている姿から痛みがあるのは明らかだった。

伊東の2日目に高木と柳原の再戦があった。柳原の逃げを高木が差すだけのシンプルな展開でホッとしたが、レース後の柳原のコメントは印象的だった。

「函館の後はグランプリを争っている選手にとんでもないことをしてしまったと落ち込みました。今日は真っすぐ走ろうと心がけたし、先行しかないと思っていました」

傷心の柳原真緒だったが伊東は2、2、1着でまとめた(撮影・松井律)
傷心の柳原真緒だったが伊東は2、2、1着でまとめた(撮影・松井律)

ケガをした方はもちろん痛いが、させてしまった方も傷ついている。

危険を回避して7着になるよりも、勝つためなら多少のリスクもいとわないのが競輪選手。ならば、危険な動きの抑止力になるためのルールは徹底して欲しい。【松井律】