【ヤマコウの輪界見聞録】

先日の広島G3は松浦悠士の優勝で幕を閉じた。清水裕友もそうだが、G3初優勝を地元で飾れる選手がどれほどいるだろうか。地元G3の優勝は、ある意味G1より重きを置く選手が多い。勝負強い選手は、日々の積み重ねで生まれる。どのレースも全力で戦うということの意味を若い選手は特に考えて欲しい。

その一方、競輪祭でKEIRINグランプリ(GP)出場を僅差で逃したのが原田研太朗だ。決勝のメンバーが決まった時、GP出場の可能性は高まったが、結局は清水が勝ち取った。脚力は両者ともそんなに変わらない中で、何が決め手だったのか。それはやはり位置取りから始まる競輪に対する認識が甘かったから。研太朗には口酸っぱく「初手は大事だぞ」と言ってきて、本人も意欲的に取り組んでいた時期もあったが、結局元に戻ってしまった。

調子がいい時は、少々位置取りが悪くても脚力でねじ伏せることができる。しかし、調子が悪くなるとそれが出来なくなり、後方に置かれる。だから調子のいい時ほど位置取りが大事なのだ。平原康多が競輪祭の時に言っていた、「安易な位置取りだけはしない」というのはそういうことだ。

今の研太朗に大事なのは、中団は確実に取る組み立てをすること。それでも後方に置かれたら、位置取りには負けたということだから、次の手を打つ(カマシ)こと。思った通りにならないレースの時にこそ胆力が鍛えられる。それがGPへの近道だ。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)