【ヤマコウ・輪界見聞録】

 村上義弘の落車が心配だ。3月と同じ箇所を骨折して全治45日の診断書が出ている。昨年の名古屋日本選手権と立川グランプリの優勝から一転、流れが悪くなっている。長い選手人生、このような経験は誰にでも訪れる。今はしっかり治療して復帰戦を心待ちにしたいと思う。

 さて、SPR賞を勝つのは誰なのか。浅井康太は金子貴志が付くと気迫が前面に出てくる。古性優作-岩津裕介は即席ラインで結束力は弱い。そして平原康多-武田豊樹の安定の最強コンビ。緩んだら行く態勢は十分整っている。最後に渡辺一成-新田祐大の福島コンビ。今年の取手全日本選抜から一成が前を回るパターンも模索してきた。新田は「平原さんと武田さんのような関係になりたい」と言うが「自分の番手戦が不慣れなこと」もあり、一成が前でのワンツーはまだ決まっていない。しかし土壌は確実にできつつある。それは初日のワンツーからも感じたことだが、信頼関係が芽生えてきたことが大きい。

 どの選手もそうだが、いきなりラインを組んで信頼関係ができるものではない。圧倒的に両者の力量が違えば別だが、同じ格の選手が組んでも、まずは手探りから始まる。何回も走って熟成してくる。その段階に2人は突入したと思う。一成が近況、力の出し惜しみをせず「番手を回ることによってレースが見えてきた」のも好材料だ。先行も辞さないスタイルで攻めていけば好機は訪れる。このレベルの選手は流れを自分で作る。流れを作ってつかむことができれば今後のG1戦線にもいい影響が出るだろう。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)