年末の大一番、SGグランプリ開幕まで残り1週間となった。1億円バトルに向けて、トップレーサーたちの動向に目がいきがちだが、SGの裏ではなじみのレーサーたちが次々と引退した。10~11月の2カ月間だけで伊藤宏さん、大山博美さん、打越晶さん、松元弥佑紀さんなど計14人。

実は、明日13日が最終日の住之江ボートでも、地元のベテラン・小島幸弘(50=大阪)が、今節限りで現役を退くことを表明した。5年前から膝の病気を抱え、満身創痍(そうい)で奮闘してきた。「ずっと足をかばって走っていたら、腰にきた。踏ん張りが利かなくなった」。思うように操縦できない悔しさはいかばかりだったろうか。肉体の限界に達して、苦渋の決断をするしかなかった。

小島幸弘(18年8月11日撮影)
小島幸弘(18年8月11日撮影)

前節の戸田一般戦では、愛弟子の田中信一郎(46=大阪)と同じあっせんになり、レースで対決(3日目10R)もした。「シン(田中信一郎)が1着で、俺は3着まで追い上げたからね。そのシリーズでシンは優勝してくれて、ピットに帰ってきたら『小島(幸弘)さんの前で優勝できてうれしかった』と言うてくれてな…。うれしかった」。

小島幸弘という選手は、とことん人を育てた功労者だった。田中や湯川浩司をはじめ、大阪支部の後輩たちを愛情たっぷりに見守ってきた。まさに人情の塊と言い表せる男の引き際を、しっかりと見届けたい。

◆小島幸弘(こじま・たかひろ)1968年(昭43)2月21日、大阪府生まれ。67期として90年11月にデビュー。96年12月の三国一般戦で初優勝。人情に厚く、面倒見の良さは抜群。多くの後輩に慕われてきたベテラン。