ボート界最強軍団「大阪支部」の石野貴之(34)が堂々と逃げ切り、SG5度目制覇を果たした。福岡の超難水面、1番人気、ニュージェネレーショングループのプレッシャーを見事にはねのけた。獲得賞金は5500万円を超え、年末のSG住之江グランプリ出場を確実にした。2着は果敢に外を握った茅原悠紀、3着は篠崎元志が桐生順平の猛追を振り切った。

 今やSGの顔といえる石野貴之が、初のオールスター制覇を飾った。表彰式で笑みを浮かべたが、舞台裏は薄氷を踏む思いだった。

 最終日の福岡水面は、魔物と化した。風はなく、レースを追うごとに潮が引いていく。なのに、1Mはシリーズ最大のうねりが発生。前半戦からイン選手のターンが流れたり、先マイした後にスピンするなどの異常事態となった。石野も、昼間の試運転で恐怖感を覚えた。「相当うねっていた。気を使う水面で、難しいレースだった」。さらに、スタート展示からファンの大歓声を受けて、緊張感もMAXになった。

 最大の勝負どころは1Mの手前だった。うねる水面だと、どのタイミングでレバーを落としてターンするか、判断が難しい。石野もかなり悩んだ。「むっちゃ考えました。どれぐらいのうねりなら、これぐらい(のレバー操作)でいこうと」。1Mは自分のターンに集中。2コースから差す田中信一郎、3コースからまくり差しを狙う茅原悠紀を完璧に封じて3年連続のSGタイトルを手にした。

 獲得賞金は5500万円を超えて、ランク2位に上昇した。年末のSGグランプリ出場は確実だが、モチベーションは下がらない。「昨年も(選出)1位で優勝が取れなかった。何か足りないものを探しながら、(年末まで)成長していきたい」。最大目標はグランプリの優勝しかない。その1点だけを見据えて、大得意な夏のSGロードを疾走する。【津波謙次】

 ◆石野貴之(いしの・たかゆき)1982年(昭57)6月3日、大阪府生まれ。90期生として02年5月住之江でデビュー。10年7月丸亀オーシャンカップでSG初優勝。通算優勝はSG5回、G15回。同期は吉田拡郎、宇野弥生ら。165センチ、51キロ。血液型O。