真夏のオールスターバトルは渡辺一成(34=福島)が歓喜の地元G1を制した。途中で竹内雄作が落車(失格)するアクシデントがあったが、目標の新田祐大が絶好の4番手を確保して最終2角手前からまくり、ゴール前見事に差し切った。昨年の全日本選抜以来、2度目のG1制覇で2年連続のKEIRINグランプリ(GP)切符をつかんだ。

 渡辺がナショナルチーム同士のゴール前勝負を見事に制した。残り2周半の青板バックで4車結束した中部勢の番手回りだった竹内が先頭の深谷知広に接触して落車。前を託した新田に絶好の4番手が転がり込んだ。最終2角手前からスーパーダッシュした新田を追走。圧巻のパワーを誇る新田を、スピード勝負で差し切った。「ナショナルチームのトレーニングでベストタイムも上がっている。まだまだ強くなれる」。その言葉を証明した。

 涙はない。「抜いた感覚はあった。でも内から抜いたので素直に喜べない。レース内容から喜びも半分」と20年の東京五輪で4大会連続の代表を狙う男は自らに厳しい。「東京五輪を控えて、ここで緊張して体が動かないようでは駄目」。自転車競技人生の集大成と位置付ける3年後の大舞台を鋭く見据えた。

 ナショナルチーム最優先の日程で出走本数も少ない上に、11月上旬からW杯が開幕してナショナルチームの活動一色となる。「獲得賞金ではGPには乗れないと思っていた」。それが新田との地元ワンツー&地元G1初制覇で2年連続のGP切符ゲット。これから東京五輪への道を加速していく。【大上悟】

 ◆渡辺一成(わたなべ・かずなり)1983年(昭58)8月12日、福島県双葉町生まれ。県立小高工高卒。競輪学校88期生で在校成績38位。03年7月京王閣デビュー。16年2月全日本選抜でG1初優勝。五輪は08年北京、12年ロンドン、16年リオと3大会連続で出場。806戦228勝。通算取得賞金4億5805万2900円。176センチ、80キロ。血液型A。