伝説だ2センチ差名牝対決/ベストレース
<08年ベストレース>
「2センチ差の激戦」に競馬ファンは酔いしれた。日刊スポーツ新聞社制定「第7回中央競馬年間ベストレース」に、ウオッカとダイワスカーレットの牝馬2頭が死闘を演じた天皇賞(秋)が選ばれた。得票ポイント「3297」は過去最高。2位の有馬記念を3000ポイント近く引き離した。歴史に残る一戦は、ベストレース史上でもぶっちぎりの独走だった。
今、VTRを見直してもなお、1着と2着が判然としない。ウオッカVSダイワスカーレット。現役最強牝馬2頭が見せた強く、美しき戦い。いや、スカーレットが圧倒的強さで有馬記念を制した事実を思えば、もはや「牝馬」のただし書きは不要かもしれない。
ウオッカがわずか2センチ差で凱歌を上げた。2センチ-。携帯電話の厚さ並みでしかない差。138回を数える伝統の天皇賞はもちろん、過去、幾多のG1を振り返ってもこれほどの微差はそうそうお目にかかれるものではない。写真判定は15分を要した。通常は1枚で判定するところを、3枚の写真を使った。12万1961人の観衆は、かたずをのんで、電光掲示板を見守っていた。勝者と敗者が別れた瞬間こそ、ため息と嘆声、歓声が入り混じった。が、時間がたつに従って、人々は「良きもの」を目の当たりに出来た幸福に酔っていた。このレースを見たこと、それはその人の競馬観戦歴にとって何よりの宝物になる。今回集めた「3297」のポイント数が、それを雄弁に物語っている。
天皇賞(秋)のもう一方の主役ダイワスカーレットが、牝馬として37年ぶりの優勝を遂げた有馬記念が有力な対抗と目されていた。歴戦の牡馬を向こうに回し、まさに横綱相撲で一蹴したレース。スカーレットファンとしてはこちらを選ぶのではないか、との観測もあった。が、「ベストレース」とは、ひいきの馬の勝ち負けだけが評価の基準ではない。見る者に感動を与えること。今回の結果をみると、それがはっきりと分かる。
ポイントはぐんと下がるとはいえ、3位に入ったジャパンCダートの「健闘」が光る。初めてジャパンCと分割開催となり、競馬場も阪神に替わった。これも事前は、スクリーンヒーローが勝ったジャパンCの方が上、の見方が主だった。が、ルメールの好騎乗に導かれたカネヒキリが、難病屈腱炎を克服、2年4か月の休養を経て復活したドラマがファンの心をとらえた。
[2008年12月31日8時34分 紙面から]
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