ブエナ2冠!直線14頭抜き/オークス
<オークス>◇24日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳牝◇出走17頭
強い。強すぎる。大外を猛追した桜花賞馬ブエナビスタ(栗東・松田博)が、残り200メートルで4馬身あったレッドディザイアとの差をゴール寸前で鼻差逆転。単勝1・4倍に応え、史上11頭目の牝馬クラシック2冠を達成した。安藤勝己騎手(49)は判断の迷いを帳消しにしたスーパー牝馬に脱帽。秋の凱旋門賞(仏G1、芝2400メートル、10月4日=ロンシャン)挑戦が決定した。
届くのか。7万6000人が埋めたスタンドがどよめいた。残り400メートルを切っても、大本命馬ブエナビスタはまだ中団の外。直線の坂を駆け上がり、残り1ハロン標に差しかかっても、先に抜け出したレッドディザイアとの差はまだ4馬身ある。悲鳴が上がる。前の脚色も鈍らない。「頼む。間に合ってくれ」。安藤勝は祈るような思いで、懸命に愛馬を鼓舞した。あと3馬身、2馬身。馬はゴールが分かっているかのように、思い切り四肢を伸ばす。馬体が合う。胸突き八丁のゴール前。本気を出した。これまでライバルをのみ込んできた末脚は裏切らなかった。とても届かないと思われた差を縮め、最後の1完歩。鼻だけ前に出た。「勝っているのか、まったく自信がなかった。負けなくて良かった」。ジョッキーは胸をなで下ろした。6戦5勝で2冠制覇。阪神JFと桜花賞の15頭に次ぐ直線14頭抜き。牝馬同士で決して先着を許さない。
負けていてもおかしくなかった。勝負どころの直線入り口で、安藤勝は内に進路を取るか、外に出すかの判断にちゅうちょした。今の府中は内が伸びる馬場。この日のレースもことごとく内が残っていた。内有利と分かっているベテランは直線入り口で、いったんは馬を内にむけた。だが、コースはあきそうにもない。あきらめて外に切り替えた。「失敗したなと思った。GOサインを出したらすぐ反応してくれたんだろうけど、自分が判断を迷った分、差し遅れたかと思った」。
桜花賞の4角で馬群を割れず外に持ち出したシーンは、あん上が意図的に脚をためにいった動き。しかし、今回は違った。迷いから生まれた名手のミスを救ったのは、超一流馬のみが使える豪脚だった。上がり33秒6はもちろんメンバー中最速。女版ディープインパクトとも呼ばれるゆえんの強力な末脚で、負けレースを勝たせてしまった。一気の距離延長も、初の左回り、長距離輸送もお構いなし。辛勝ではあったが着差以上の能力差を強烈に印象づけた。
もはや国内で同世代の牝馬と争っている馬ではない。秋には牝馬3冠を狙わず、世界最高峰の凱旋門賞に向かうことが決定した。古馬牡馬の59・5キロに対し、3歳牝馬は54・5キロで出られる。5キロのアドバンテージをもってすれば、世界一を狙うことも可能。ウイナーズサークルで勝利騎手インタビューを終えた安藤勝に「凱旋門賞も頼むぞ」と声が飛んだ。日本近代競馬の結晶ディープインパクトも勝てなかった世界最高峰制覇へ、ファンの夢も加速させた。【高木一成】
[2009年5月25日8時29分 紙面から]
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