■ 第21回 ゲスト:井端弘和選手(中日) 

 今回は、このコーナー初めての中日の選手の登場です。首位を独走中の9月8日に行われた対談。選手会長として。チームリーダーとして奮闘中の井端選手に、落合監督のこと。そして自身の野球について耳を傾ける遠藤君。その結論は…「やっぱ、今年の中日は強い!」さて、そのワケは…???(プロ野球ai2004年11月号)

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今年は選手会長のアタリ年!? 慌ててスーツの換えを購入

遠藤 首位、独走中の中日。さて、ちょっと気の早い話ですが、今年1年はどうでした?
井端 いろいろ大変な問題を抱えているけど、僕自身の野球は充実していたと思いますね。
遠藤 でも、えらいときに選手会長になったなぁって思わへん?
井端 そうなんですよ。去年は、選手会長の立浪さんを見ていて、会議は少ないし。ラクだと思っていたんですけどね(笑)。今年に至っては5年分の会議をやっていると思いますよ(笑)。
遠藤 しかも若干27歳。7年目やけど、まだベテラン選手がおるチームで大変やね。
井端 選手会長はオフが大変で、シーズン中は野球に集中できるって聞いていたんですけど、今年はシーズン中が忙しい! 
遠藤 だって、シーズン中、これだけスーツを着てテレビに出るのは初めてじゃない?
井端 ホントですよ。だから、会議の度に考えますよ。前回はこのスーツを着て行ったから今回はこれにしよう、とかね(笑)。
遠藤 ホンマやな。スーツの換えも買った?
井端 いつもはシーズン始めに買うだけなんですけど、今年は夏に2〜3着買いましたよ。
遠藤 アハハハ! そうなんや。選手会長ってどれくらい前から言われるんですか?
井端 1年前です。立浪さんに言われて。それで去年はずっと立浪さんについて勉強していました。
今しっかりと体を作らないと、この先、野球が苦しくなるんですよね
遠藤 選手会長として心がけていることはあるの?
井端 選手は決して勘違いしちゃいけないと思うんです。選手である以上は、ファンやマスコミともうまく付き合っていかないといけない。1軍に上がって態度が変わる選手もいますしね。僕よりも上の人には言いにくいけど、下の選手にはアドバイスするようにしています。
遠藤 そうなんや。井端君、ちょっと怖そうやから、説得力あるでしょう?
井端 いや、僕よりも立浪さんの方がスゴイ。何も言わなくてもみんな付いていきますからね。
遠藤 背中を見てついてこいって言うタイプなんや。
井端 そうですね。例えば、ロッカーでも若い選手が騒いでいても、立浪さんがロッカーに来ると空気が変わりますもんね。ビシっとします。それに僕がロッカー整理しておけよって言っても、みんな聞かないのに、立浪さんが、「オイ、ロッカー汚いぞ」って一言でみんな、一斉に片付けが始まりますからね。
遠藤 へぇ〜! ウチで言うと、ダウンタウンと一緒やなぁ。スタッフとワ〜って騒いでても、松本さんが入ってくるとピリっとするからなぁ(笑)。

「ダブルプレーを打ってこい!」監督のその一言が、僕の野球を変えた。

遠藤 でも、今年は監督が落合さんになってどうでしたか?
井端 いい緊張感の中で普段通りの野球ができる。プレッシャーに負けることなく楽しくやる雰囲気作りがウマイんですよね。
遠藤 今シーズン。中日だけ補強しなかったでしょう。その中で、落合監督が「選手がそれぞれの可能性を5%ちょっと伸ばせば優勝できる」って言っていてその通りになった。何か、特別なものがあるのかなぁ?
井端 就任当初、選手を褒めちぎって、みんなすっかりその気になってしまったんです。
遠藤 三冠王を取っている方に褒められたら大丈夫やって思ったんや。で、井端君は何て言われたん?
「落合さんは言葉の魔術師。いやぁ、今年の中日は強い!」
井端 それがですね、他の選手には声をかけるのに僕には話しかけてくれないんです。最初は落ち込みましたよ。何で僕には声をかけてくれないんだろう、って。
遠藤 うんうん。
井端 唯一、話かけてくるのは野球以外の話。激励会があるから、オマエが出て来い、とか雑用ばかりですよ。
遠藤 嫌われているのかなぁって思ってた?
井端 はい(笑)。
遠藤 それが、「違うんだ、信用されているんや」って分かった瞬間って?
井端 シーズン途中に、新聞に、「一番信頼している」って書いてあったんです。その瞬間、一気に心のモヤモヤがなくなりましたね。
遠藤 あ〜選手の心をよく読んでるんやな。
井端 試合でもそうですよ。どんな試合でも、勝ちたいとか、そういうことは絶対に口に出さないんです。例えば開幕戦。初回に点を取られて6対0になったときに、マウンドにきて「今日はもうえええやろ」って言ったんです。僕らみんな、「え!?」って思いましたよ。「そっかぁ。監督はいいんだ」そう思ったらリラックスして打ち出して逆転。初回にノックアウトされた時なんて、マウンドに来て「今日はケガしないようにな」とか。そういうときに限って逆転することが多いんですよね。
遠藤 落合さんってよく自分でマウンドに行くけどそんな話をしているんや。
井端 代打も代えられた選手に必ず一声かけるんです。コーチよりも監督に言われた方が選手は納得しますからね。選手はやる気になりますよね。
遠藤 しかも、監督の現役時代の背番号を今つけているよね。それはどうなの?
井端 落合さんが監督就任したときに、何番にしようかなぁって思いましたよ(笑)。でも、言われるまでは自分から言うのはやめようって。そしたら66! ホッとしました。
遠藤 シーズン中、井端君のプレーの転機になる監督の一言ってあった?
井端 僕、これまでダブルプレーを打っちゃいけないってずっと思っていたんです。それが、監督が「ダブルプレー大いに結構!」って言うんです。例えば、ノーアウトランナー一塁の場面。今まではランナーを進めたい一心で右方向に打っていたのに、落合さんは「引っ張ってダブルプレーを打ってこい」って言うんです。一度、本当に試合で打ったら、その試合後、監督が「今日の収穫はあのダブルプレーだ」って言ったんです。翌日、監督に聞いたら、「いい当たりの打球がたまたま正面にいっただけで紙一重の当たりだった。ああいうのが次に生きてくるから」。その後も懲りずに打っていたら、それが段々、内野の間を抜けるようになって、ヒットが多くなったんですよ。
「お笑いが大好き。いつも番組チェックは欠かしません」(井端)「ホンマに? オフになったら、収録見に来て〜!」(遠藤)
遠藤 へぇ〜! 言葉の魔術師や。
井端 ヒット打ってやろうじゃなくて、ダブルプレー打ってやろうと思ったら結構いいんですよ。
遠藤 余裕がある。ダブルプレーを打ってやろうとか。もういいや、とかね。勝ちにこだわらんとこ〜って思ったら勝ったりするねん。
井端 それで、ダブルプレーを打ってもショックがないんです。だって、打とうと思って打ってるわけですからね。
遠藤 そうだよね。今までと野球に対する姿勢が変わったんだ。
井端 悩まなくなりましたね。
遠藤 今までは、ダブルプレーを打ったらアカンって思ってたんやもんなぁ。
井端 そうですね。2ストライクから三振でってヤマを張ってみたり。今年は野球がおもしろいですよ。
遠藤 うわ〜! 中日強いわ!
井端 コーチ陣もいいんですよ。投手をみて「今日は適当に打ってこい」とか。これは「打つ気マンマンで行かないと打てないぞ〜」とか。選手をのせる言葉がウマイんです。
遠藤 表で働く人間を気持ちよくさせる方法を知っているのは、チーム状態がいい証拠だね。位端君が理想としているバッター像はある?
井端 空振りしないこと。バットにさえ当たれば何とかなる。それは追求していきたいと思っています。
遠藤 守備は?
井端 年々、年をとって動きが狭くなると思うんです。その時のために、今から体に無駄のない、疲れない、怪我をしない。ラクな取り方、楽な投げ方を身に付けたい。若ければガムシャラにやればいいけど、そのままだと30代半ばでダメになってしまう。無駄なくさばくことを身につけたいと思っています。
遠藤 140試合は長いし、それを毎年毎年やっていくと、そういう域に達してくるんだね。まだ、20代やのに、も〜そんなとこまで考えているの? スゴイね。俺の29歳の時なんか、先のことなんて一つも考えてなかったわ。
いばた・ひろかず
1975年5月12日、神奈川県出身。堀越から亜大を経て、97年ドラフト5位で中日入団。173cm、75kg。右投右打。02年にはベストナインを獲得し、今やリーグを代表する遊撃手に。7年目の今年、選手会長としてチームを引っ張る。血液型B型。背番号6
井端 立浪さんがよくアドバイスしてくださるんです。例えば、自分で走っていても気持ちはあと3m前を走っている、なんてね。

中日のロッカーの中ではいつもお笑いのDVD。ただいま、お笑い浸透中〜!

遠藤 優勝に対する思いはある?
井端 僕、まだビールかけをしたことがないんです。4年前に、ファームが優勝したときは1軍。その翌年に1軍が優勝したときは2軍。99年からチームにいてビールかけをしたことがないのは僕だけなんです。
遠藤 え!? そうなの? 俺も「ガキの使い」でビールかけしたからね(笑)。
井端 あ! 見ました見ました!
遠藤 見てくれてるんや。
井端 僕ね、お笑い、大好きなんですよ。ビデオやDVD、買って見てます。うちのチームでは、落合英さんが大好きで、よくビデオやDVDをロッカーで流して、チームでも浸透してきていますよ。それまでは、僕と落合英さんしかお笑いのネタがわからなくて、ボケても誰も突っ込んでくれなくて寂しかったですよ。
遠藤 いや、いい切り替えが出来ている証拠やね。だって、充実しているでしょう。チームのたたき上げ。自分のプライドもあるだろうし。幹の太さも感じるやろうし。しかも、今年はプロ野球70年。その歴史の中で、一番大切なときに野球選手としておるわけやからね。
井端 そうですね。この先、どうなるかわからないですけど、中日は50年日本一から遠ざかっているので、何とか、今年は日本一になりたいと思います。


撮影/黒埼彰 取材/保坂淑子 協力/赤坂プリンスホテル
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