今シーズン、絶好調の阪神の投手陣を引っ張る矢野選手が今回のゲストです。捕手は、お笑いの“つっこみ”に似ている!なんて意外な共通点も見つけて盛り上がる二人。矢野選手の言葉の一つ一つ。そして存在そのものは、今年の阪神、そのものでした。(プロ野球ai2002年9月号)
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ピッチャーの性格を見ながら、いい球を引き出す。あとはリズムよく投げさせてますよ(矢野)
遠藤 おかしな話しですよ。
矢野 何ですか?
遠藤 aiの人気ランキング。マスク部門があれば、絶対に1位間違いなしの“マスク”ですわ。透明のマスクを作りたいですよ。
矢野 (笑)いえいえ。とんでもないですよ。僕ね、サッカーの井原さんに似てるって言われるんですよ。
遠藤 あ、似てます!!
矢野 一度、偶然会ったことがあるんですよ。新横浜プリンスホテルでね、エレベーターが開いたら中にいたんです! びっくりして、なぜか僕が恥ずかしくって背中向けて乗ってしまいましたよ(笑)。自分でも似てるなぁとか思いながら。
遠藤 背中なんか向けなくってもいいじゃないですか。もう球界を代表するキャッチャーなんですから!
矢野 いえいえ。とんでもないですわ。遠藤さんって、うちの坪井と仲がいいんですよね。
遠藤 そうっすね。
矢野 アイツもだいぶけがも良くなってきててね。もうちょっとみたいですよ。
遠藤 矢野さん、前半戦けがで戦線を離脱したから、今の坪井の気持ちとかよくわかるんでしょうね。
矢野 そうですね。坪井も、僕が活躍した時には電話をくれますからね。
遠藤 あの、素朴な疑問をいいですか? 今、阪神の選手って故障したら背番号を帽子に書くじゃないですか。例えば矢野さんのときは「39」。復帰されたら番号を消しますよね。あれってまた新しい帽子をもらえるんですか?
矢野 アハハハ。もらう選手もいるけど、今なら、僕の「39」の「9」だけを消して、「2」にして坪井の番号にしたり(笑)。
遠藤 そんなんしてるんですか(笑)。
矢野 基本的には新しい帽子。もらえると思うんですけどね。
遠藤 でも、ケガしている選手にとってはすごく心強いんでしょうね。
矢野 チームのみんなと一緒に戦いたい、という気持ちになりますよ。
遠藤 それにしても、前半戦は、チームが大活躍。もちろん、後半戦も期待しているんですけど、矢野さんにとってはどうでしたか?
矢野 去年、僕自身、開幕戦で巨人にぼろぼろにやられてそのままシーズンあがったり…。その時から、スタートでコケたら上がるのにすごいパワーと技術がいる。開幕戦の大切さを知りました。だから、今年は、去年と同じ巨人に、リベンジできたのは、いいスタートのきっかけだったと思います。
遠藤 それはやっぱり、監督が変わられたじゃないですか。開幕の前日
ひとつとっても全然違うんじゃないんですか?
矢野 そうですね。けっこう不安なまま入ることが多いと思うんです。落ちつかなかったりね。星野さんが開幕当日に選手の部屋に行って、話しをしてくれたりとかね。それに、オープン戦から投手陣には自信を持っていましたし、そういう意味では不安は無かったですね。
遠藤 確かに、今年のピッチャー陣は絶対にいい!桧山さん、アリアスのクリーンアップはもちろん。矢野さんから始まる、8、9、1番。ここがデカイんですわ。
矢野 ほんとは下位打線でホームランがあったほうがいいと思うんです。でも、僕はそんな打てるバッターじゃない。僕が塁に出ることによって、その後の打順のピッチャーも、バントで送ってベンチでゆっくりできるし、1番の今岡にうまくつなげる。僕が塁に出ることは大きなことだと思っています。
遠藤 やっぱり、8番に矢野さんがいる存在感は大きいですよ。だってね、これまでは失礼な話、次の回が7番からや、ってなるとこの間に用事すまそうか、と思うんですよ(笑)。でもね、今年は、待てよ。8番に矢野がおるぞって思うとトイレにもいけませんよ。
矢野 いやいや、変わらないですよ。
遠藤 やっぱり、去年と今年で変わったところってあるんですか?
矢野 んー、強いていうなら気持ちの問題ですよね。とにかく4月がすごい大事だと思っていた。開幕、巨人との2連戦でヒットを2本ずつ打てたんですね。野球選手は結果が大事。結果が出れば気持ちはすごく楽になります。その後に大きく影響したと思いますよ。
30歳を越えてからの活躍は励みになります!
遠藤 ちょっと話は変わるんですけど、矢野さん。桧山さんもそうやと思うんですけど、30歳を越えてから急激に野球が上手くなって超一流の仲間入りをしたと思うんです。
矢野 ハハハハ! どうですかね。でも中日から阪神に来て、チャンスをもらえるようになったのが大きいでしょうね。中日ではどうしても、中村さん(横浜)っていう絶対的なキャッチャーがいましたからね。もちろん僕に実力がなかったからなんですけど。阪神にきて、チャ
ンスを貰って、自分にも欲が出た。もっと上手くなりたい。せっかくプロ野球に入ったんだから、このまま終わりたくない。阪神に来たことが僕を大きく変えたと思いますね。
遠藤 僕も30になるんですけど、これからやなって、励みになります。
矢野 (笑)若い頃はね、とにかくプロ野球に入るのが夢だったんです。プロに入った次の目標は何だろうってわからなくなるんです。プロで4番を打って、王さんの記録を塗り替えるぞ〜なんてレベルの選手じゃない。一軍にいるだけで、変に満足する自分がいた時期もありました。欲がなかったんです。で、1年、2年と経つごとに仲間がどんどんクビになっていく。そんな現実を見ていたら、せっかく入ったのに、何も残さずにこのまま終わるのはもったいないと。そう思うようになってから活躍できるようになってきたんです。
遠藤 地位は人を作るんですね。
縁の下の力持ち。お笑いの“つっこみ”はキャッチャーと似ていると思うんです(遠藤)
矢野 どんどん野球も面白くなる。それと同時にやればやるほど難しくもなります。
遠藤 その難しさって何ですか?
矢野 キャッチャーとして打者心理を読むことがすごく難しい。投手心理はもちろんですけど、こう思ってるだろうな、とリードする。逆にこっちの心理も読まれていたりする。そのかけひきが難しい。ずーっとやっていると、騙しあいですよ。
遠藤 お笑いでいうと、キャッチャーと、つっこみって似てると思うんです。縁の下の力持ちみたいなね。目立つのはピッチャーであり、ボケであり。完封させてやりたい、笑いをいっぱい取らせてやりたい。
矢野 いいこと言いますねぇ〜! ピッチャーの一番いい球を投げさすことが大切。あとはリズム。それが悪いときはダメですからね。リズムいいときは、バッターに考える時間さえも与えない。こっちのテンポでどんどん投げ込んでいますからね。
遠藤 一緒ですわ。コンビ間の空気が悪い時は絶対に笑いなんか取れない。そういう時は始まる前に軽くしゃべって、相方を和ませるから。
矢野 共通点ってあるんですねー。
ピッチャーの性格を見ながら、いい球を引き出す。あとはリズムよく投げさせてますよ(矢野)
遠藤ただ、僕の場合は一人しか相手にせぇへんけど、矢野さんはたくさんのピッチャーの操作をしないといけないんですよね。
矢野 そうですね。みんな性格も違うし、持っている球も違う。僕がもっとうまく引き出してあげれば、いい結果が出せるかと思いますけどね。
遠藤 選手とコミュニケーションを取るキャッチャーもいますけど、矢野さんなりの方法ってなんですか?
矢野 試合が終わった時に話しをすることかな。今日のあのシーンはどう思ってた?とか。ピッチャーが考えていたことは俺も知りたい。俺はこういう考えやったよっていうことも説明して、じゃあ次はこうしようとか、もっとこうしたほうがええんちゃうかって話すんです。
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やの・あきひろ 1968年12月6日、大阪府出身。181cm、81kg。右投右打。桜宮、東北福祉を経て90年ドラフト2位で中日入団。97年、阪神にトレード。今シーズンは、4月13日に左肩のけがで離脱も、5月20日に復帰し活躍中。血液型O型
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遠藤 ピッチャーの性格もある?
矢野 あんまり言い過ぎたらダメなやつもいれば、井川みたいに放っておいても自分できっちりできるタイプもいる。ワンポイントだけ言っておけば、一生懸命それをやってくれる。それもこっちに伝わってくるから、もっとこうしてやろうって思う。井川はボールもすごいけど、そういうところがこれからエースになっていく器かなって思いますよね。
遠藤 選手一人一人。今年は取り組む姿勢が違いますもんね。
矢野 今年は全員で戦っていると思
うんです。全員が勝利の可能性を信じているんです。
遠藤 いやー、楽しみやなー。
矢野 これからが正念場でしょうね。
遠藤 いや僕はもうケガさえしなければいいですよ。あとはもう、矢野さんの好きにやってください。絶対にいいプレーにつながると信じています。
矢野 ありがとうございます(笑)。
遠藤 阪神の魅力って何やと思います?
矢野 やっぱりファンですよ。1試合勝ったら僕らよりも喜んでくださるでしょう。そういう姿を見てるとね、僕らはその期待に答えないといけないってすごく感じるんです。僕がけがで戻ってきた時の始めの守りや打席に入るときの拍手と歓声は今でも忘れません。涙が出るくらい嬉しかったです。それに手を上げて答えたいんですけど、それもなかなかできない状況もある。その分、試合で結果出して声援にこたえたい。それは僕に限らず選手みんなが思っていると思います。
遠藤 光栄です! これからも頑張ってください!
取材/保坂淑子 撮影/黒ア彰
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