2年前に取材を通して知り合った二人。でも、実は遠藤君の弟が中村選手と同じ渋谷高出身だったり、趣味が同じゴルフだったり、と共通点が多く、以来大の仲良しに。今や日本を代表するスラッガー、中村選手の原点。そして今後の話など。話は尽きることなく続いたのでした…。
(プロ野球ai2002年11月号)
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
2つ年上は、高校野球では神様!?遠藤君が2つ上ニイヤン!
遠藤 ノリ君と会ったのは…。
中村 仙台です。
遠藤 そうやそうや。テレビ局のお仕事で行ったんやわ。
中村 オリンピックの年ですね。
遠藤 初めて話させてもらって、いきなりベンチでバットを2本もらったんだよね。今、うちの家宝になってるよ。しかも、その試合で、ライトスタンドにホームランを打ったんですよ。もう、大興奮でね〜。ホンマに打ったでおいぃ〜って。かっこよすぎる! 正直、なかなか年下で尊敬できる人っていないけど、そのうちの1人ですよ。
中村 えっ、何歳ですか?
遠藤 31歳。
中村 僕の2つ上ですね。高校では1年にとって3年生は神様の存在ですわ。
遠藤 オイ、中村〜! ってアゴで使える立場やからね。でも、そんな絶対にでけへん! 今や日本を代表する野球選手やからね。自分でも、こうありたいっていうんかなぁ。ポリシーってどんなところ?
中村 僕ね、足が遅いんですね。走るのがしんどいから、打ってもヒットはいらないんですよ。打つんだったらホームラン! ゆっくり塁を走るのがいい。僕にとって、ホームランは欠かせないですね。
遠藤 豪快さはね。しかも、1本1本質が違うもんね。
中村 感触も違いますよ。ホームラン打ったときってね、一瞬シーンとなるんですよ。
遠藤 えっ、そうなん?
中村 テレビで見ていると、ホームランを打った瞬間に、“わ〜”って大歓声が聞こえるでしょう。でも実際はね、ほんの瞬間。1、2秒、静かになるんですよ。
遠藤 へ〜! 何万人もの人が息を飲む瞬間があるんや〜!
中村 そうそう。一瞬止まるんです。でも、球場によっても違うんですよ。東京ドームは近鉄ファンが多いから、シーンとなった後に大歓声になるんだけど、福岡ドームは、球場のお客さん、ほぼ全員がダイエーのファンやから、シーンとなったまま。さびしいですわ。でも、それがまた快感でね(笑)。
遠藤 どちらか言うたら、S(サド)のタイプやろ? いじめてやれーみたいなね。
中村 う〜ん。確かにSやね。でも、最近は違う球団のファンの方も僕のホームランを期待してくれている。それが嬉しいですよね。
遠藤 それはスラッガーじゃないと言えないことですわ。僕なんてホームランなんて打ったことないからね。
中村 遠藤さんは1番タイプでしょう? でも、テレビとか見ていても、よう野球を知ってますよね? 僕らよりも野球好きちゃうかなって思いますよ。野球小僧やね。
遠藤 う〜ん、どうやろなぁ。僕ね、切り替えがうまくでけへんタイプ。何日経ってもどうしてあの球を振ってしまったんやろな〜って根に持つタイプやからダメですわ。
中村 次の打席でそれを思っていたら、絶対打てないですよ。すぐに切り替えないと。
遠藤 その切り替えってどうしてるん?
中村 基本的にプラス思考の性格なんです。でも今は余裕があるから気持ちもそうなれるけど、若いときはとにかく必死。何とかして1軍に残らないといけない、ってね。
遠藤 ましてや、ノリ君が若い頃の“いてまえ打線”ってすごかったからね。
中村 ほんまですわ。当時の打線と今ではレベルが違いますよ。
遠藤 当時はブライアントに村上さんに石井浩朗さん。そこに新人で入ってきて、勝負しようとしているわけですからね。そら、大変ですわ。
プロ3年目。26本のホームランのノルマ達成まで、外出禁止!?
|
|
なかむら・のりひろ 1972年7月24日、大阪府出身。180cm、92kg。右投右打。渋谷から91年ドラフト4位で近鉄入団。2000年、本塁打、打点王獲得。昨年はチームをリーグ優勝に導き、今や日本を代表するスラッガーに。今シーズン、FAを獲得。オフの動向に注目される。血液型O型。
|
遠藤 僕、一つ聞きたかったことがあるんやけど、プロ11年目にもなると後輩に教えないといけない立場でもありますよね。自分から、オイオイって声をかけて教える?
中村 教えないっすよ。
遠藤 そうやろ。僕も、ノリ君と同じ芸能界11年目やねん。若手に対して、来るものは拒まずやねん。どんどん来てくれたら一緒に遊んだりかわいがったりすんねんけど、自分から声をかけたりはしないから。オレらも先輩らに教えてほしいことは聞きに行くし。
中村 そうやね。聞く耳をもってこないと、いくらこっちから言うても、耳には入らないし理解できないと思うんですよ。
遠藤 でも入団当初のノリ君はどうやった?
中村 僕も自分でこの人や、って決めた先輩、コーチのところにばかり行ってましたわ。僕も我が強かったから、入団してすぐにコーチとケンカして。「オレの言うことが聞かれへんのか〜」って言われて、「聞けません!」ってハッキリ言うたんですわ。
遠藤 うわっ! 器がでかいわ。
中村 教えられて、人のせいにしたくないでしょう。自分でやって打てないならば、ファーム行きも納得できるし、自分でも勉強する。でも、あれをしなさい、こうしなさい。100%人から言われたとおりのバッティングをして、打てないとその人のせいにしてしまう。意味がないんですよ。
遠藤 僕らも一緒ですわ。やりたいことをやって、それで数字が悪かったらしゃあないと。ノリ君のその中での一番の出会いって?
中村 まずは先輩。現在は、兄貴になるんですけど、村上崇さん。(中村選手は村上選手の妹さんと結婚)バッティングに関しては教えていただきましたね。
遠藤 背番号を引きついでますからね。
中村 その出会いがあって、いろいろ乗り越えられた。次にはコーチとの出会いです。僕が若い頃、近鉄のコーチをされていた水谷さんとの出会いはかなり大きかったです。この方の指導はひどかった(笑)。どんだけ練習をやらされたか。人の意見になんて全然耳を貸さないんですよ。例えば、トレーナーが、“これ以上無理したら足が切れます”ってストップをかけているのに、練習はやらせるんです。「やらなアカン」と。しかも広島弁。仁義無き戦いですわ(笑)。
遠藤 それがあっての「今」なんですね。
中村 練習はとことんやらされた。でも、理想とするバッティングスタイルが一緒だったから、僕も納得して水谷さんを信じてやっていたんですよね。それがちゃうかったら、僕は今、僕はここにはいないですよね。
遠藤 何が一番しんどかった?
中村 3年目のときに、3ヶ月外出禁止させられたんです。
遠藤 プロなのに?
中村 そう(笑)。20本のホームランのノルマを達成するまで、外に出たらアカンと。寮生活だったから、コンビニもダメ、銀行もダメ。一番嬉しいのは、1軍の移動で外に出たとき(笑)。
遠藤 なんでなん?
中村 野球に没頭しろ、と。
遠藤 ほぉ〜。
中村 自分でもビックリですわ。で、や〜っと20本を打って、外出禁止が解けたときに、水谷さんが、ふと「俺、そんなことお前に言うた覚えない」なんていうんです。「お前、そんなこと絶対に守ってなかったやろ?」って。必死に3ヶ月、我慢してたのに(笑)。
遠藤 その年は26本打ちましたよね?
中村 もう、僕、死人のようでしたよ(笑)。遠征に行っても、ホテルから一歩も出ない。食事もホテル内の食事会場に移動するだけ。
遠藤 集中できる?
中村 それが当時はできたんですよね。
遠藤 得たことは大きかったんや。
中村 このときに、バッティングを体で覚えましたよね。それがずっとつながっていると思うんです。今から体を使って打つってことはないんです。頭を使って、どうやったら打てるかを考えている。
遠藤 もう完成されていますからね。けがさえなければ、常に野球界でトップにいる人ですからね。
中村 もうね、同じことは絶対に繰り返したくないんでね。手首を手術した時はもう野球人生終わったかと思いましたからね。
遠藤 3回手術したんやったっけ?
中村 そうですね。(遠藤さんに手首の手術の傷を見せる)
遠藤 うわ、ホンマや〜! 3回も手術しとって、バットをフルスイングする勇気はスゴイですわ。
中村 頭おかしいでしょう? 3回やってて、まだあんなに振ってるんですよ(笑)。
遠藤 でも、それがないと、今のノリ君はないやんか。自分というものをしっかり持ってるから、こだわり続ける。だからこそ、3年目の苦労も、今に生きている。器に収まってしまうのはアカンやろ。
中村 今の若い選手は、ちょっと痛いところがあるとすぐに口に出して“痛い”って言うてしまうんです。僕らは言えなかったですからね。言った時点でファーム行きですからね。
遠藤 厳しい野球をしてきた、最後の世代かもしれないですよ。水飲むな〜っていうね。うわ〜、えらいおっさんくさいわ(笑)。
中村 でもね、それが基本ですよ。
遠藤 同じ年代。頑張って欲しいわぁ。もっともっとプロ野球を楽しくしていって欲しい!
中村 そうしたいんですけどねー。新ストライクゾーンがうっとおしんですよ。あれは、野球を面白くなくす!
遠藤 僕も野球好きな人間として、試合時間を短くするって言う発想がよくわからへん。好きな野球を短くする発想がわからへん。
中村 今年はかなりこのストライクゾーンに振り回されました。
遠藤 これに慣れないといけない?
中村 でもね、慣れたくないですね。自分自身がめっちゃくちゃになりますよ。
遠藤 我の強さが出ましたね(笑)。その中で打つ快感もある?
中村 そうですね。厳しいストライクゾーンでも、自分のバッティング、フルスイングで豪快なバッティングを見せたい。難しいですけど、もっともっと野球を面白くできるように頑張りますわ。
遠藤 今年のオフは、FAもあるし…。
中村 ムフフフ…。
遠藤 え〜っ! 楽しみやわ〜。
中村 1度きりの人生やから、悔いのない選択しますわ。
遠藤 ノリ君がどこにおっても、その豪快なバッティング、見れるのを楽しみにしてますね。
撮影/黒ア彰 取材/保坂淑子 協力/都ホテル東京
|