■ 第13回 遠藤章造 VS 坪井智哉(日本ハム) ■

 以前から、遠藤君から“大の仲良し”とアピールのあった坪井選手。仲良しになったきっかけは、遠藤君の大のファン“阪神”でも、いまは、チームを超えて人間のお付き合い。日ハムに移籍して、さらに「人間として成長した」という坪井君。さらに魅力を増したその姿に感心しきりの遠藤君でした。 (プロ野球ai2003年7月号)

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二人の共通点は“野球”と“関西のお笑い”

遠藤 今日は坪井君、私服がかっこええなぁ。こんな姿初めて見るわ。いつもユニホームやもんな。
坪井 一度だけ私服がありますよ。2年前の安芸キャンプに行ったときに一緒に食事しましたよね。
遠藤 あ〜。そうやそうや。室戸で延々とキャンプの話してはったね(笑)。そっから付き合いをさせてもらったんやね。でも、オレ、野球選手の友達や知り合い。たくさんいるけど、一番仲がいいと思ってるからね。
坪井 ありがとうございます。
遠藤 しかも、お笑い好きやから。
坪井 ガキの使い〜はよく見に行かせてもらいましたよね。
遠藤 ところで、坪井君、調子はどうなん?
坪井 調子はいい方ですよ。

――阪神から日ハムへ移籍して初めてのシーズン。何か技術的な変化はあるんですか?
坪井 技術に関して言えば、そうですね、まぁ変わってるのもありますね。技術のレベルはあがってきていると思いますよ。

――坪井君って、野球の話をあんまりしないんですよね。
遠藤 そうそう。オレだって、3年前のキャンプのときの第一印象が正直、ものすごい恐いイメージやったんだよね。雑誌とか新聞を見て、ストイックなイメージがあったんよ。で、初めて会うてしゃべらせてもらったら、たった5分で、「あ、ええ兄ちゃんなんや」(笑)。

――その5分間で何があったの?
遠藤 いや、でも2人だけじゃなくて、何人かでワイワイ話したからね。
坪井 僕は遠藤さんは阪神ファンっていうのは知ってたんですけど。お笑い芸人さんだって構えていたんですけど、普通の人でした(笑)。
遠藤 坪井君、お笑い好きやもんな。
坪井 そうですね。特に関西芸人が好きなんです。お笑いは関西の笑いじゃないと笑えませんから(笑)。

――同じ笑いでも、東京の笑いはダメ?
坪井 僕は関西弁のつっこみとかがすきなんです。
遠藤 だから、ウマが合うんだろうね。
坪井 僕、お笑いの面は研究熱心なんですよ。ビデオ撮ったり、チェックは欠かさないですからね。
遠藤 坪井君でさえこんなにビデオでつっこみやらボケを勉強してるのに、世の芸人たちももっと勉強せなあかんわ!

遠藤さんからのメール。うれしくて嫁に見せちゃいました

――先ほど、“人間的な付き合いになってきてる”っていってたけど、いつ頃から?
遠藤 ちょくちょく連絡くれてたよね? 日ハムにトレードが決まったときもね?
坪井 まずは急いでメールで報告したんですよね。すぐに返事がきて、そのときのメールの内容がよかったんですよ。“一人の人間として応援しているから”って。もちろん、僕の中でも、日ハムで頑張ろうっていう気持ちになろうとはしてたんですけど、やっぱり正直、ショックな気持ちもあったんです。そんな時にメールをいただいて。すごい嬉しかったですよね。
遠藤 オレは、阪神が好きやけど、それは球団として。阪神を出たから付き合いがなくなるなんて、一切ないよ。坪井君という人間と知り合って、その後で日ハムいこうが、どこいこうが、オレの中では変わらへんから。ただ、いっぱいおる坪井君の友達の一人として、今、何ができるんやろって思っただけやで。

――それが伝わった?
坪井 僕、メールは誰にも見せないんですよ。秘密主義のところがちょっとあって、いつも自分の中で処理するんです。でも、遠藤さんからのメールだけは申し訳ないですけど、嫁に見せましたもん。

――ちょっと足踏みしていた自分の背中を押してくれる力にはなった。
つぼい・ともちか
1974年2月19日、東京都出身、177cm、79kg。左投左打。PL学園、青学大、東芝を経て、97年ドラフト4位で阪神入団。98年、巨人高橋由伸、中日川上憲伸とともに新人王を争う。ここ2年はケガが続き、不本意なシーズンを送っていた。今年から日本ハムに移籍。開幕からスタメンで活躍中。
坪井 いや、ホントそうですよね。
遠藤 で、実際に今年、日ハムでやってみて、何か変化とかあった?
坪井 正直言うと、甲子園球場のあの大観衆の中でプレーをするなんてすごい幸せなこと。でも阪神の中にいると、それがマヒしてきて、当然になってきちゃうんですね。それが一転、パリーグはお客さんも少ない。阪神の試合をたまにテレビでみると、あぁ、この選手たちは幸せやなぁとは思うし、僕も幸せだったんだなぁっていうのを感じれらる。そういう気持ちになれたことが、自分にとってすごい収穫ですよね。なかなかないですよね、こういう経験は。だからといって、やる気がしないかといえば、そうじゃない。元いたチームの一員として、もっと阪神の選手には大観衆の中でプレーすることの幸せを感じながらやってほしいんです。
遠藤 外から阪神を見たのは、いい経験やね。
坪井 自分でいうのもあれなんですけ、阪神でやってきた5年間の視野と今の視野っていうのは、全然広がったと思いますね。考え方が変わりましたよ。
遠藤 いいきっかけだったのかもしれないね。
坪井 もちろん、その瞬間は、そう思えなかったですよ。でもね、今は本当にそう思うんです。

――どんな風に変わった?
坪井 分かりやすく言ったら、阪神時代は自分のことだけを考えていたって感じですよね。精神的にも弱かったこともあるんでしょうけど。どんなに負けても、自分が成績残したらいいんと思っていたんですよ。それがプロだと思ってましたしね。でも、今はこのチームで勝ちたいって本心で思うようになりましたし。今は、自分がどれだけ活躍しても、チームが負けたら全然嬉しくないんです。その割合が変わってきましたね。
遠藤 大人になってきた証拠だよ。

――遠藤君は、日ハムに来てからの坪井君のプレーを見た?
遠藤 球場では見てないけど、テレビではたまに見ているよ。他チームからきても、年齢的にチームリーダーとしての存在感もあるだろうし。そういう選手がフォアザチームの精神でいるのは、チームとして心強いだろうね。もし、この先、コーチも含めて阪神に戻る機会があったら、いい風を吹かせることができるんだろうね。

選手に監督、首脳陣。本当に仲のいいチーム。このチームで心底優勝したいと思うんです

――選手との触れ合いの中で、チームの違いを感じたことはあります?
坪井 あのね、日ハムって選手同士でめっちゃ仲いいんですよ。
遠藤 えっ! 仲いいの!?
坪井 そうなんです。たとえば、誰かが話していたら、必ず話に加わってくるんですよ。
遠藤 分かる分かる(笑)いい意味の、ええかっこしいがおれへんのやろ?
坪井 そうなんです。もちろん、派閥やいがみ合いもないですしね。
遠藤 それはいいねぇ〜。

――岩本さんが、再三“このチームで優勝したいんや”っていう気持ちがよくわかりますよね。
坪井 そうですね。阪神のときも、もちろん優勝したかったし、負けたら悔しかったですよ。でもね、日ハムに来て、僕は外様ですよね。でも、2月のキャンプから参加して、こんなに早く、このチームで勝ちたいって思うとは自分でもびっくりですよ。
遠藤 チームによって、そないに違うもんなんやなぁ。
坪井 たまに、チームメートに“日ハムはどうや?”って聞かれるんですけど、僕はいつも“あぁ本当にいい球団ですよ”って言うんです。そしたら、みんな口を揃えて“そうだろ〜”っていうんですよね。日ハムはね、選手全員がこのチームに自信持ってるんですよ。
遠藤 しかも、来年には北海道に本拠地を構えるしね。
坪井 僕自身、あんまりピンとは来ないんですけどね。でもまぁいいきっかけになるとは思いますけどね。

――きっかけ?
坪井 本拠地が変わるなんて、すごいことだと思いますよ。北海道の人たちから見れば画期的なんでしょうね。そこで、どれだけ勝てるか。内容にしろいい試合を見せられるように。そこからは、僕ら選手の問題ですよね。
遠藤 HRがなんぼ。安打数なんぼとかそういうのもデカイと思うけど、自分たちのチームを心から好きでいられるのは大きいよね。
坪井 選手ばかりでじゃなくて、首脳陣も選手を熱心に見てくれるんですよ。ヒット打ったら一緒になってヨッシャ〜って喜んでくれるのももちろん。ランナー二塁で、外のボールをひっぱるのも同じように喜んでくれる。Bクラスで3割2分打つよりも、Aクラス優勝で2割8分5厘打つほうが価値があるんですよ。
遠藤 坪井君としては、その辺をもっとこれから追及していきたいとこやね。
坪井 そうですね。もちろん、今までもそうだったようにバッティング技術ももちろんありますけど、それにプラスアルファできる何かがあればいいですね。

遠藤 今、坪井君が野球をする上での支えってなに?
坪井 う〜ん…。やっぱり、監督とかコーチが何とかして選手に野球をやりやすい環境を与えようと必死になってるわけですよ。で、僕ね、ここまで首脳陣が一生懸命なところって聞いたことなかったんですよ。これまでも首脳陣は指導者っていうイメージでしたからね。日ハムは違うんです。選手たちが力を発揮しやすい環境作りの役割もある。キャンプのときも監督の部屋で通訳と3人で色々話をしたんですけど、ヒルマン監督が「夜中でもバッティングしたいと思ったら、俺をいつでもたたき起こしてくれと。オレは監督なんだから。オレはいつでもバッティングの手伝いをするし、ティーも投げる。何でもするから」っていうんですよ。なかなかいえないですよね。失敗したら、人間ですからね。顔に出る事だってあると思うんです。でも、ヒルマンさんは絶対に顔に出さない。そればかりか、「次頑張れよ」っていうんですよ。そんな風に僕らに一生懸命になってくれている監督の期待に答えたいですよね。遠藤さんの支えは何ですか?
遠藤 今? やっぱり子供やろなぁ…って、オイっ! それを言わしたいだけやろ?(笑)。僕は、毎年元旦に今年の目標を全部書き出すのね。それで、12月31日の日に、目標が達成できたかどうかをチェックする。その目標を達成させることが支えだね。
坪井 僕も、このチームで優勝できるようにがんばりますよ!
遠藤 そうやね。俺も応援しとくよ。
坪井 はい! これからは日本ハムもお願いしますね!

撮影/黒ア彰 取材/保坂淑子

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