■ 第15回 遠藤章造 VS 今岡誠(阪神) ■

 野球界、とりわけ阪神の選手との交友が広い遠藤君も、今岡選手とは初のご対面! ちょっと緊張気味でしたが、今岡選手の優しい口調に、話は弾みすっかり仲良しに。今年の野球、チームのこと。そしてプライベートまで…。遠藤君の“聞きたい”モードは全開でした! (プロ野球ai2003年11月号)

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“遠藤リサーチ”によると、今岡選手は野球にはストイック。でも、素顔は“イイ人”!

遠藤 優勝おめでとうございます!
今岡 ありがとうございます。
遠藤 ホンマに待ちに待った日が来ましたわ。
今岡 8月にマジックが出てから長かったですね。でも、マジック3くらいで足踏みしていたときは、面白かったですよ。ポンポンって勝ったら面白くないでしょう。
遠藤 ファンはたまったもんじゃないですよ。はよ、決めてくれ、と。まさか、ひょっとしたら…って思いますからね。
今岡 アハハ! そうですよね。ホンマにお待たせしました!

遠藤 今日は今岡さんと対談できるなんて、ホンマうれしいですわ。以前、神宮に見に行ったときに、試合前のベンチを見ていたら、今岡さんだけグラウンドの方を向いて、じーっと集中していたんですわ。えらいストイックな人やなぁって思ってたんですよ。
今岡 マジですか? たまたまですわ(笑)
遠藤 正直、そのイメージが強かったから、実は僕、えらい緊張してるんですわ。
今岡 アハハハ。話すのは初めてですからね。でも、他の選手から聞いていますよ。阪神ファンでうちの選手とよく食事に行っているそうですね。
遠藤 仲良くしてもらっていますよ。早速ね、今日の対談に備えてリサーチしたんです。今岡さんってどんな人?って。
今岡 なんて言うてました?
遠藤 先日、西武対ダイエー戦を見に…いや、早速(日本シリーズ、阪神の)対戦チームを偵察に行ってきたんです。そこで、松井稼頭央君に聞いてみたんです。ほら、PLで後輩でしょう。“本当にいい人ですよ”って言っていましたよ。
今岡 (ニコニコ)飾らず見たままですよ。

遠藤 実は、今日は聞きたいことがたくさんあるんです。今年はよう打ちまくりましたね。
今岡 前半4月の2〜3週間くらいまでがダメでしたけどね(笑)
遠藤 安芸キャンプからチェックさせてもらっていたんですけど、今年はずいぶん引っ張りにかかっているなぁって思っていたんですよね。でも、そこから調整された。試合の節目節目に“今年は集中力がいい”ってよく口にしていますよね。今までももちろん集中していたと思うんですけど、特に違う面っていうのは何ですか?
今岡 去年は、例えば第1、2打席でヒットが出ると、自然と勢いに乗って2本3本と打てた。でも、それが凡打だと、今日はもうだめだ、という気分になりがちだったんです。それが、今年はどんな打席でも結果を抜きにして集中している。意識的に雑念を入れないようにしたんです。
遠藤 もちろんケースバイケースだと思うんですが、今岡さんはバッターボックスに入る前に狙い球を絞っていくタイプですか?
今岡 その時によって違いますよ。もちろん、ミーティングでもらうデータも頭に入れつつ、1打席目は自分の感性で立ちます。その後は状況を見ますね。僕は1番の打順で、前の打席は9番バッター。ピッチャーが入っているケースが多い。その配球を見るときもあります。5,6球粘ってくれる投手もいて、それが全部まっすぐだったら、僕は変化球でくるかな、と思うし。あっさり三振になったら、ちょっとわからんなーって見ますしね。
遠藤 なるほどね。今岡さんって見ていると、バッターボックスに入ってから、内野のポジショニングをじっくり見ていますよね。
今岡 すごい! よく見てますね。
遠藤 たとえば、狙い球をスライダーに絞ってバッターボックスに入っても、ポジショニングで一、二塁間が詰められていたら、変えるのかなぁって思ってたんです。
今岡 事前にもらうデータと、実際に試合で感じるものは別にして考えていますからね。確かにじっくり見てかえていますよ。所詮、データは技術あってこそ生かされるもの。みんなデータとおりに打てるんだったら、3割、4割打ってるでしょう。やっても打てないから、練習してがんばるんです。まずは、日々の技術の向上が一番ですよ。

強い阪神! 今でも信じられません…

遠藤 PL、東洋。今岡さんのこれまでの野球人生って勝って当たり前のところでやってきましたよね。でも、阪神は入団してからしばらく低迷していた。今、強いチームにいる環境が楽しいでしょ?
今岡 信じられないですよ〜。
遠藤 ファンも、信じられないですよ。だって、夏に貯金が40ってどういうこと! ってね(笑)。
今岡 去年も前半戦はそんな感じでしたもんね。だって、開幕戦に勝ったのは去年がはじめての経験でしたからね。そこで連勝して、梅雨まではチームが首位。信じられなかったですよ。

――それからご自分のケガもあって、チームも首位から落ちた。周囲の期待、プレッシャーを感じたりはしませんでした?

今岡 いや、そうでもなかったですね。でも、去年はいい経験をさせていただいたと思います。夏までは勢いで何とか上にいましたけど、そこからは先は勢いだけでは優勝はできない。最後まで戦い抜くためには個々の技術が大切なことだということを、実感しました。勢いと成績。そして技術。すべてがあってこその優勝です。今年は、投手しかり、打者しかり。みんなすごい成績を残していますからね。
遠藤 ド素人の目線から見ていても、去年は勢い。今年は打つほうも守る方も。しっかり送ってしっかり走って。守備体系もしっかりして。本当に地に足をつけてやっているなって思いますよね。
今岡 それに、今年は目標がやっぱり明確なものがありましたからね。全然違いますよね。

自分なりの1番のスタイルを確立。「打たなければ、僕が1番にいる意味がないんです…」

遠藤 何より、チームを勢いづけるのは、今岡さんの先頭打者ホームラン! 今年は7本も売っているんですよ。しかも初球から。スゴイですよ!

――これまでの1番バッターとは違うタイプですよね?

今岡 そうですね。僕は足も全然速くないし、だって、僕みたいなのが、1番にいて、打てないと意味がないですからね。だから今年、4月に調子が悪かったときは、監督に1番を代えられるかなって思っていました。たとえば、赤星のような足の速い選手が打てなくても、1番として四球で出られれば走塁という仕事がある。でも僕なんて四球で出ても走れないですからね。でも、そこで我慢をしてずっと1番で使ってくれた。その期待に応えたかったんですよ。
遠藤 確かに、赤星さんが出て足でかき回す野球もいいけど、今岡さんが先頭打者で打ったら、見ている方もおもしろい! よっしゃ、今日は大丈夫って勢いがつくんです。相手投手も、いきなり今岡さんに打たれたら、“あれ、今日はまずいな”って思うでしょう。
今岡 でも、それで打てないと、僕が1番でいる意味がないですからね。
遠藤 プロ野球史に残る1番バッターですよね。
今岡 今でも、周囲の1番バッターへの固定観念はありますよ。でも、こうしてチームも強くて、成績も残すことができたら、少なからず認めてくれる人が出てきてくれるでしょう。それがうれしいですよ。
遠藤 自分のスタイルを築きましたね。
今岡 去年、赤星のケガをきっかけに、1番に起用して以来、自分の中でも、1番打者としての自分を確立したいなって思ったんです。今後の野球人生、ということになったら、また別の理想像はありますが、今は、1番バッターとして楽しい、やりがいもありますよね。

いまおか・まこと
1974年9月11日、兵庫県出身、185cm、85kg。右投右打。PL学園、東洋大を経て、96年ドラフト1位で阪神入団。昨年は、シーズン途中、ケガで戦列を離れながらも、初の3割1分7厘をマーク。1番バッターとして、チームの切り込み隊長。今やチームリーダーとしても、その存在は大きい。

家でテレビのリモコンを握り締めている瞬間が一番楽しい!

遠藤 そういう毎日の中で、今岡さんの気分転換って?
今岡 僕、家が大好きなんですよ。スカパーとか、ケーブルとか。テレビのリモコンを3つくらい持ってテレビを見ている時間が一番ですね。
遠藤 テレビ好きなんですか?
今岡 はい! 夜中、みんなが寝静まってから、一人で見ているんですよ。おもしろい番組、いっぱい放送しているじゃないですか。
遠藤 じゃあ、スカイAとかガオラで、その日の試合をもう一度放送していますよね。見ます?
今岡 見ます見ます! マジマジは見ないですけどね。あとは、昔の格闘技とか、歌番組とか将棋。3〜4時に寝ても、翌日は10時まではたっぷり寝ていられますからね。
遠藤 子供さんはいくつですか?
今岡 もうすぐ4歳です。だんだん僕がプロ野球選手だとわかってきたみたいで、「パパ、今日、うまかったね」って言ってくれますよ。
遠藤 ええなぁ〜。俺も、早く子供に「今日の突っ込みサイコー」って言われるようになりたいわ。

――さて、あらためて2003年のシーズンを振り返っていただけますか?

今岡 優勝したことが何より。それ以上のものはないと思います。チームが勝つことによって、こんなに大勢の人が喜んでくれるのは、選手冥利に尽きます。がんばり甲斐がありますよ。
遠藤 でも、ケガだけはホンマに気をつけてくださいね。それだけを気をつけてくれれば、夜中チャンネルを替えようが何しようが…いや、あんまり代えすぎて腱鞘炎になって打たれへんようになったりしたら、クレームつけますよ。これからも本当にがんばってください!

撮影/黒ア彰 取材/保坂淑子

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