■ 第16回 遠藤章造 VS 上原浩治(巨人) ■

 今回のお相手は、巨人、そしてオフには日本代表でも活躍した上原選手。今年も16勝、200イニングを達成して、今ノリにノッてる上原選手。遠藤クンの率直な質問は「何でそんなに勝てんの?」シーズン中には見られない上原選手の本音は、遠藤クンが直撃してくれました! (プロ野球ai2004年1月号)

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1年目の敬遠で流した涙。今でもあのときの気持ちは同じ。最後の1球まで真剣勝負したい。

上原 優勝おめでとうございます!
遠藤 え!?
上原 参りました。
遠藤 アハハハ! え〜、今年は5球団の皆様の貢献があったからこそ、我が阪神タイガースも優勝させていただきました。
上原 アハハハ!
遠藤 ま、それはいいとして。上原さん、早速ですけど、率直に聞いていいですか?
上原 ハイ!
遠藤 なんでそんなに勝てんねん!
上原 ウワハハハ!
遠藤 僕ね、野球ゲームをよくやるんですけど、架空の人物を作るんです。自分がもしこの選手だったら、理想の成績を20勝4敗、防御率2,56。翌年はこれぐらい年棒があがって、最終的に7年目くらいからFAしてアメリカに行って…なんてね。その俺の理想の選手像の夢の数字を実際にやっているのが上原君なんだよね。1年目の20勝から始まって、翌年は9勝やったけど、その後はずっと2ケタでしょう。それって、ホンマにすごいと思うんやわ。
上原 いや、やっぱり打線ですよ。だって、僕らが0で抑えても味方が0だったら勝てない。しかも、巨人は1発のホームランが多いですからね。
遠藤 味方打線が本拠地東京ドームでホームランを打っているということは、逆に打たれる可能性も大きいわけでしょう?
上原 今年は被本塁打が多いですからね。
遠藤 でも、そんな中で16勝はスゴイっすよ。
上原 ありがとうございます。
遠藤 11年目で20勝しているのが大きいですよね?
上原 いやぁ〜失敗しましたね(笑)。
遠藤 え、そうなん。プレッシャーになる?
上原 最初にいきなりあの数字。その後はそれを基準に見られてしまいますからね。阪神の井川君みたいな生き方が一番賢いですよね。
遠藤 あぁ〜。ちょっとずつ勝ち星を重ねていくのね。でも、見ている方はスター登場でメッチャうれしいですよ。
上原 でも、翌年ガクーンと落ちましたからね(笑)。
遠藤 それでも9勝ですよ! よそのチームやったら9勝できない選手が何人おるか! 上原浩治という人間は何で、そんなに勝てんねん! 他の投手と比べたら巨人のエースは12球団のエースみたいなもの。期待を背負って、これだけの成績をふと振り返ってみたことはありますか?
上原 終ってみて、例えば今年やったら16勝。あぁ、よう頑張ったな、と思いますよ。でもシーズン中は、勝ちに飢えているんですよね。どれだけ勝ってもまだ、勝ち足りない。
遠藤 1年目からそう思ってた?
上原 1年目は何も思ってなかったんです。でも、終ってみたら、まだ勝てる。そういう気持ちになりますからね。
遠藤 1年目の時に、敬遠するしないでマウンドで涙を流しましたよね。あれは1年目やからこそですか? 今もし、同じ状況になったら、涙を流しますかね?
上原 どうでしょう。その後、同じような場面に遭遇していないですからね。でも、 “勝負させてください!”と言っているかもしれないですね。
遠藤 あれは野球ファンとして、俺も上原君と同じ気持ちやね。確かに、相手選手のタイトルは大きいよ。一生残るものだから。でもねぇ…。
上原 タイトル争いじゃなくてもね。例えば140試合で3割を残したとしても、全試合フル出場しての3割じゃないでしょう。僕も2年目、3年目って、規定投球回数があと3イニングだったんですけど、コーチに“もういいです。そこまでして勝ちたくないです”って言ったんです。だから、その2年間は規定投球回数にいってないんですよ。個人の記録を優先させたくなかったんです。
遠藤 なるほどなぁ〜! それと、さっきの“勝ちたい”っていう気持ちとは違うんや。
上原 優勝争いしている中で勝ちたいんですよ。
遠藤 そういう中での勝利のこだわりなんや。
上原 140試合目って、もう若手中心だったりするじゃないですか。それも疑問なんです。最後の1試合まで真剣に勝負したい。だから優勝決まった時点で終ったらいいのに、っていつも思います。今年、僕らはAクラス入りがかかっていたから、140試合最後まで勝負は捨てなかったけど。140試合目っていうのと、消化試合っていう言葉は違うでしょう。
遠藤 選手のモチベーションが絶対に変ってくるからね。いや、選手ばかりじゃないで。ファンもそうや。大体、我々(阪神ファン)は例年なら、ゴールデンウイークが終った時点で、消化試合がスタートしているからね。
上原 早いっすね〜(笑)。
遠藤 うん、早い! ホンマに早い! 5月5日の鯉のぼりを見て、それをしまっている時点で、もう来年の戦力のことを考えてしまうからね(笑)。
上原 フフフ。今年は楽しかったでしょう?
遠藤 僕ね、上原さんの前だから言うわけじゃないけど、阪神はすごい好きだけど、それよりも、野球が好きなんですよ。リトルリーグの監督とかやってみたいな〜って思うし、今でも、ドラフトに指名されるの待っている。
上原 アハハハ! ありえへん!
遠藤 今年も19日はドキドキしてたからね。東洋大姫路のアン君と同じ気持ちやったって。アン君のところにはたくさんの報道陣がいて、俺んとこには誰もいなかったけど。プロ野球界にアピールが足りひんかったんやなぁ、と。よっしゃ、また来年チャンスがあるな、と。
上原 ハハハハ! ま、まぁ…いい雰囲気作りをしてくれるでしょうね。うちのチームでのムードメーカーって言うたら、元木さんでしょうか。でも、やるときはやりますからね。
遠藤 …そこか…! 俺はしゃべりの方だけやもんなぁ。俺ね、巨人のファン感謝デーに出させていただいて、紅白戦に出させてもらったことがあるんですよ。
上原 3年くらい前ですよね。
遠藤 そうそう。で、投手は松井秀喜君。…これは打てるな、って思ったからね。
上原 ほんで、打ったんですか?
遠藤 …い、いや。ショートゴロで…
上原 んじゃダメじゃないですか(笑)。そこでホームランとか打ってたら、ドラフトされてたかもしれないのに!!
遠藤 あぁ〜! そっかぁ…。

日本代表参加で見つけたもの。野球の原点。勝つ楽しさ。

遠藤 それにしても、野球ばかりじゃなくって上原君はしゃべりの方もおもろいからね。オフは、TBSラジオで番組担当しているんだって?
上原 はい。スポーツボンバーの火曜日(17時50分〜19時)を担当しています。
遠藤 まぁ、大阪人やもんなぁ。
上原 自分の仕事以外は難しいですよ。
遠藤 実際に、本当に休めるオフってどのくらい?
上原 11月と12月のちょっとくらいかな。
遠藤 え!? 1年間で休むのって1ヶ月程度なの? 大変やなぁ。
上原 でも、野球のことは1年中考えていますよ。離れないですよ。
遠藤 うん、わかる。俺もお笑いのこと考えているからね。メシ食ってても、おもろいヤツおらんかな〜なんてね。でも、今年のオフは日本代表にも参加。プロとは違いますか?
上原 今回は絶対に勝ってオリンピックの出場権を得ないといけない。まして選手はプロだけ。変なプレッシャーがありましたね。僕の場合、中国戦で投げるって言った段階で、マスコミが“相手は格下で、相手にしてない”みたいなことを書いていたから、それが辛かった! だって、実際に試合をやってみなきゃわからない。強いから勝つんじゃないんですよ。勝つから強いんです! 
遠藤 そうですよね。
上原 とにかくみんな一生懸命でした。シーズン中以上に一生懸命になりましたよ。
遠藤 そこで見つけた新たな自分はありました?
上原 ちょっと原点っていうかね。野球の楽しさを思い出しましたね。僕ら140試合あって、次々とやっているけど、それがないですからね。気持ちの持っていき方が大変でした。でも、いい経験になりましたね。

自分を勝利に駆り立てるもの。ファン、そして周りからの注目の目。「常に見られているのがいいかもしれない」

うえはら・こうじ
1975年4月3日、大阪府出身、186cm、85kg。右投右打。東海大仰星、大体大を経て、98年ドラフト1位で巨人入団。99年最優秀防御率、99、02年最多勝利、99年奪三振、99、02年沢村賞、99、02年ベストナイン、99年ゴールデングラブ賞、99年新人王獲得。シーズン中の目標、2年連続で200イニングを達成。名実ともに巨人のエースへ。
遠藤 上原君ってジンクスってあるの?
上原 必ず靴を左からはきます。マウンドに上がるときは絶対にラインを踏まないで左足から入る。マウンドに上がったら帽子をとってプレートに触る。
遠藤 ラインをまたぐ時に右足になりそうで、歩幅を合わせて左足にしたことってあります?
上原 あります、あります! チョコチョコって歩幅小さくしてね(笑)。
遠藤 プロ入りして、初登板、東京ドーム戦からそうなんですか? ちなみに、阪神戦でKOされましたけど。
上原 え!? 僕のデビュー戦?
遠藤 そう、俺ね、見に行ってたんよ。そのとき、すでに騒がれてきてたから、これだけの観衆の中で、しかも開幕3連戦の3戦目。こういうところで投げるルーキーってどんな投手やって思ってたんですけどね。たまたま阪神が勝ったけど、ビックリしたね。しかも、その後、どんどん勝ち星を重ねて。ずっと進化し続けている? これだけのいい成績を残している中でも、プロ野球選手として一皮向けたときって?
上原 巨人っていうチームにいて、常にファンにも、そしてマスコミにも見られている。その環境が強いですよね。ここで負けていたらイメージが悪い。だから、勝っていい印象をつけたい。コイツなら、大丈夫だっていうのを、ファンの目線からでも巨人の内部からもそうしたいんです。
遠藤 それがしたくてできる人間って限られる。やっぱりスゴイわ。毎年、20勝するもんだというプレシャーをかけられるでしょう。その中で技術の進化ってどうなんですか?
上原 何か向上心を持っていないとダメ。自分で言うところの技術は、キレですね。あとは持っているものをいかにレベルアップしていくか。今から新しいものに取り組んでもそんなに簡単できるものじゃないですからね。
遠藤 なるほど〜。そんな中でも、絶対にケガだけは気をつけてくださいね。俺、いつも選手にはそれだけを言うんです。とにかくケガなくやってくれればそれでいいですわ。あとは俺らが考えられない成績。例えば、20勝を2年連続達成とか、1点台の防御率とか。そういう何かを目指していただいて、野球ファンをもっと楽しませて欲しいですね。う〜ん! 夢が広がりますね。
上原 ハイ! 頑張ります。目指すものがある今は止まるわけにいきませんからね。
遠藤 また、是非このコーナーに来てくださいよ。
上原 はい! でもこのコーナー。いい選手がたくさん出てますよね。しかも、出たら活躍してるじゃないですか。松井稼頭央さんもメジャー行くし。遠藤さん、何か持ってるんじゃないですか?
遠藤 おっ!
上原 あげ○○?
遠藤 上原君も来年、また頑張れるで〜!
上原 ハイ! 頑張ります!

撮影/黒埼彰 取材/保坂淑子 協力/ホテルパシフィック東京

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