■ 第17回 ゲスト:五十嵐亮太選手(ヤクルト) 

 今回のお相手は、日本最速に迫る157kmの速球を投げるヤクルトの五十嵐選手。ヤクルトにも仲のいい選手がいる遠藤君も五十嵐選手とゆっくりお話をするのは初めて。最初は、五十嵐選手のカッコよさに惚れ惚れしていた遠藤君も、野球に対するストイックな姿勢や、熱い思いを語る五十嵐君を見て、「イメージが変わったわ! ますます、好きになった! これからもっともっと応援するで〜!」と、大ファンに早がわり! 「速い球を投げたい」五十嵐選手の野球を見れば、もっともっと野球が楽しくなる。間違いないっ! (プロ野球ai2004年3月号)

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速く投げるコツ? え!? これって生まれもった才能ですのん?

遠藤 最初っから直球で聞かせて欲しいんやけど、なんでそんなに速い球を投げられるの?
五十嵐 小学校の頃から、他の人よりは肩が強かったですね。でも中学に入っても目立つ方じゃなかったし。いつからだろう…高校に入ってちょっと速くなったかなぁ。
遠藤  そのときはみんなと同じ練習してた?
五十嵐 多く走っていましたね。
遠藤  それでも球を速く投げられる。遠くに飛ばすことができるっていうのは、生まれもった才能があるからだと思うんだよね。
五十嵐 でも速く投げるコツがあるんだと思いますよ。僕はもともと肩が強かったので、どうやったら速くなるかを考えていて…え!? やっぱり天性かなぁ〜(笑)。
遠藤  アハハハハ! そうやろ〜!
五十嵐 でも、速くない人が急に速くなったりもしますもんね。コツですよ。それを掴むために練習をやっているんです。高校の時はウエイトの器具がなかったので、ひたすら走るだけだったんですよ。でも、今思えば、高校の時からウエイトの知識があれば、もっと成長していただろうなぁって思いますもん。
遠藤  今、最速が157kmでしょう。考えられへんわ。バッティングセンターの150kmなんて全然バットに当たらへんからなぁ。
五十嵐 130kmぐらいだったら、遠藤さんでもすぐに投げられますよ。
遠藤  いやいや、ムリやわ〜! でも、五十嵐君にとって、速くなるコツっていうのはウエイトやったんや。
五十嵐 そうですね。高校ではランニングしかしていなくて、プロに入ってウエイトを初めてやったんです。そこからいろいろと知識を入れて。野球に対する考え方が変わりました。
遠藤  トレーナーと相談するの?
五十嵐 そうですね。野球選手にはいろんな意見があって、ウエイトが必要で体は大きければ大きいほうがいい、という意見。そして全く反対の意見の人もいるんです。僕はいかに無駄をはぶいて必要なことをするか。合理的なトレーニング方法だけを考えています。その一番がウエイトだったんです。だって、ウエイトをしっかりすることによって、ケガの防止にもなりますからね。
遠藤  ホンマに野球には真面目なんだ。じゃないと、ここまでなかなかできないし、成績も残せないよね。食事面も気を使う?
五十嵐 そんなに細かくはやっていないんですが、たんぱく質、炭水化物、ミネラル、ビタミンを大体の感覚でとってますね。
遠藤  今は結婚して、奥さんが食事の管理をしているやろうけど、一人の時はどうやってたん?
五十嵐 外食では、自然と、“最近フルーツ食べてないや”とか“野菜足りないんじゃないか”って意識して食べるようにしていましたね。
遠藤  へぇ〜! 俺、五十嵐君に対するイメージが変わったわ。これまではそういうイメージを持っていなかったからなぁ。1年365日のうちで、常に野球のこと考えている?

五十嵐 そうなんですよ! 特に最近は、ピッチングフォームで直さないといけないところがあって、それをず〜っと頭の中で考えているんです。それがまた、秋季キャンプで変化球がいい感じで投げられたから、握りや投げ方を忘れないように。ノートにも書いたんですが、イメージを忘れずにいようと考えれば考えるほど、そればかり考えている。寝る前に球を持って、握りを練習することもあるんですよ。
遠藤  唯一、野球のことを忘れられるのは寝ているときくらい?
五十嵐 それでも夢に出てきますからね。
遠藤  スゴイ! 俺ね、いままでたくさんの選手と話ししてきたけど、一番ストイックな選手やわ。
五十嵐 そうですかね。みんなそうだと思いますよ。
遠藤  う〜ん。いや、俺、好きになりましたね。本当、そこまで考えている、というタイプだと思いませんでしたよ。野球以外でもそう? 例えば趣味は?
五十嵐 僕ね、趣味がないんですよ。強いて言えば、ぶらぶら服を買いに行くくらいかなぁ。最近は敢えて趣味を作ろうと。ギターを始めようかと思っているんです。誰かに披露するわけじゃないんですけど、気分転換としてかっこいいかな、と。
遠藤  そうやな。息抜きする場も作らんと。
五十嵐 でもね、野球に一生懸命な自分が苦しいなんて思ったことはないし。体を動かすのは小さい頃から好きだから、今が楽しいですよ。ウエイトは健康のためにいい。それが野球につながればなおいい。もっと速い球を投げたいという気持ちが強いから、もし本当にウエイトによって速い球を投げられるようになったら…という自分への期待や楽しさもある。そのワクワク感の方が大きいんですよ。
遠藤  まだ発展途上っていうのが、楽しみやね。
五十嵐 僕ね、156kmら2年間スピードが上がらなかったんですよ。でも去年1km速くなった。自分でもまだいけるって思えますよ。
遠藤  でも、ここから先が大変なんやろうな。1kmを上げるのは相当大変やろうけど、その先には160kmも頭の中にあるんやろ?
五十嵐 そうですね。
遠藤  いやぁ〜ホンマに五十嵐君、何かやってくれそうやわ。

人間、失敗して恥をかいて成長していくんです。怖がっていては何もできません

遠藤  普段はどういう選手と仲良しなの?
五十嵐 高津さんにはよく食事に連れて行ってもらいますね。
遠藤  野球の話はする?
五十嵐 ほとんどしないですね。
遠藤  今年は、高津さんが抜けて、五十嵐君がクローザーになる可能性もあるわけでしょう。もし、そうなったとしたら、自分で見てきたものをやろうとする? それとも抑えの心得を高津さんに聞こうと思う?
五十嵐 やっぱり高津さんを目指すでしょう。今までも、いろいろ教えていただいていますしね。高津さんの何がすごいって、もちろん結果を残しているのもすごい。でも、シーズンを通して、いい時も悪いときもいつも一緒。時には腹が立つときがあると思うんです。でもそれが絶対にない。回りがちゃんと見えている人なんですよ。
遠藤  野球以外の人間性もすごいんだ。
五十嵐 言い訳を言わない。野球スタイルがいいですよ。ダメなときもいい時も黙っていますからね。チームはもちろん、先発投手の勝ち負け。すべてがかかってくる立場ですからね。
遠藤  でも、今の短いイニングを投げるのが五十嵐君の天職?
五十嵐 そう言わざるをえないですよね。もともと、先発したいと思って入団してきてますけど、ここまで定着するとね。短いイニングだからこそ、若い時から使ってもらえた。それはそれでよかったと思いますね。
遠藤  じゃあ、もし来年から先発をしてくれ、って言われたら?
五十嵐 ペース配分もわからないし。1試合を投げろって言われたら投げられるけど、シーズンを通せって言われたら難しいですよね。
遠藤  でも、毎日ベンチに入るほうが大変じゃない?
五十嵐 慣れですよ。だって、僕から見たら、テレビに出ている遠藤さんの方が大変だと思いますもん。でも、やり始めの頃よりは慣れってありますよね。
遠藤  そうやね。どの世界もそうやけど、最初からうまくいくなんてないからね。僕は後輩に、よく恥をかけって言うんや。でも人間って恥をかきたくないから、何とか自分を押さえぎみにやってしまう。多分、それやったら殻を破れてないんだよね。野球もお笑いも一緒でしょう。俺かて、今まで恥を何回もかいてきているからね。言葉を噛んでしまったり、指示を無視したりとか。でも、俺は、後でテレビ局の人たちに注意される程度やけど、野球選手は、失敗することによって、チームが負けてしまって、みんなに迷惑をかけてしまうのが辛いところだよね。
五十嵐 野球って団体競技ですからね。自分ひとりがいい、じゃあ済まない。それがチーム全体のことになりますから。
遠藤  いくら速さにこだわっても、それで打たれてベンチに帰るときって辛いでしょう?
五十嵐 そうなんですよ。ただ、スピードだけにこだわっているわけじゃないんです。速球は自分の夢として持っているだけで、その他に試合で抑えるためには何が必要かは自分でわかっています。おそらく、うちのチームの人たちは、僕にストレートなんてそんなに速くなくていいと思っているハズです。それよりも、今のスピードで、コントロールを良くして、変化球でストライクが取れてくれればいいと思っているでしょうね。僕が速く投げたいといえば、周りはいい気持ちはしないと思いますよ。でも、速球はあくまで自分の夢としてもっていたいんです。

スピードは僕の夢。でも、打たれないことが一番。チームのためにも、自分のためにも 必ず抑えてみせます!

いがらし・りょうた
1979年5月28日、千葉県出身、178cm、74kg。右投右打。敬愛学園から、97年ドラフト2位でヤクルト入団。昨季はそれまでの156kmから1km伸ばし、最速157kmを記録。日本記録まであと1kmと迫る。高津選手がメジャー移籍後、今シーズンは、貴重な抑えとしても期待は大きい。血液型A型。背番号53。
遠藤  25歳といえば、ちょうど中間の年齢だよね。後輩とも飲みに行ったりするでしょう。投球術を聞かれたら教える方?
五十嵐 僕は教えますね。
遠藤  僕も教える。でも、先輩の中には、教えてくれる先輩と、そうじゃない人がいるでしょう。絶対に核心を教えない人もいるんだよね。
五十嵐 野球でもいますよ。直接技術につながったら、自分が落ちるかもしれませんからね。でもね、僕、思うんですけど、教えない人って自分に危機感がある人だと思うんです。
遠藤  俺、教えるけど、危機感がないわけじゃないなぁ。
五十嵐 それは余裕があるんですよ。教えても、抜かれないっていう自信があるし経験もある。高津さんなんて丁寧に教えてくれますからね。
遠藤  トレーニング方法も違うし、もって生まれたものも違うもんね。
五十嵐 そうそう! 教えてもらったからといって、必ずしも同じことができるとは限らないですからね。だから、後輩に聞かれたら素直に教えます。それでその人がよくなれば、それはそれでいいし。そこで僕が抜かれたら、僕の力がなかっただけ。
遠藤  これだこれ! 俺も一緒やわ。それで抜かれたらしょうがないしね。だって、五十嵐君もまだまだ貪欲やろ? スピードももちろん、チームに貢献する、というのは永久の目標やもんね。
五十嵐 人間、上を目指さないと下がる一方ですよ!
遠藤  今年は阪神のバッター、五十嵐君を打てそうにないわ。テレビをつけて五十嵐君が投げていたら、あ〜今日はヤクルトの勝ちやな、って思うようにするわ。
五十嵐 そのときは応援してくださいね。頑張ります!
遠藤  スピードへのこだわりは個人的に楽しみにしていますね。
五十嵐 はい! でも今年は変化球をもう少し増やしたいと思います。まっすぐあっての変化球ですからね。
遠藤  今日はホンマに感動しましたよ。こんなにストイックな考えの方だとは思いませんでした。子供も同級生。違う業界やけど、パパとしても頑張りましょう!

撮影/黒埼彰 取材/保坂淑子

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