はじめに

 僕は昨年メジャーの一員として1年間活動してきました。その以前には近鉄(1989〜1993)、ロッテ(1995〜1996)と合計7年間コンディショニングコーチとしてプロ球団に在籍し、貴重な経験をさせてもらいました。

 そこでは多くの人々と出会うことができ、たくさんの財産を得ることができました。一緒に仕事をした多くのコーチは、みな立派な方ばかりだったと感じています。しかし、日本球界においては残念ながらその一部に、とても理解できない人々が存在していたのもまた事実です。これはけっして個人の人間性をいっているのではなく、コーチあるいは指導者としてみた場合どうであるか、そのことについてが問題なのです。そのために周囲の人間、特に選手がどれほどの悪影響を受けていたかを安易に見逃すわけにはいかないと思っています。このような現実に僕は大いに疑問を抱き、日本の野球界が見直さなければならない問題点ではないかと考え続けてきました。

 ですから僕は、メジャーのユニホームを着てコーチとしての経験をあらためて重ね、日本に帰ってくる決意をしたのです。それはむろん、日本のプロ野球での200勝投手の実績には遠く及ばないけれども、少しでも近づけるかも知れないと自分の気持ちを奮い立たせたわけです。

 繰り返しになりますが、僕はプロ野球界にいるコーチの方が、みんな悪いと言っているわけではありません。ただ、仮に12球団に一人でも身勝手なコーチがいたら絶対に許せないということです。なぜなら、選手はコーチを選べないからです。

 選手がその気になったら、情報はあふれていますから個人的に知ることは全く可能です。個人トレーナーを雇ったり、個人レベルでコンディショニングコーチに見てもらうことができます。栄養士と契約することもできるし、自分の投球フォームを持参して動作解析をしてもらう場所もたくさんあります。

 ということは、選手の方が本来教えるべきコーチより、多くの情報を得て知っている可能性があるのです。ヘタなトレーニングコーチよりも、選手の方がトレーニングコーチを務めることができるくらい、勉強しているケースだって考えられます。実際そうしたことをしている日本の選手もいます。(野茂投手は、実際、肩のトレーニングの講演を立派にこなしました)

 生活の変化によって選手の体力が下がった分、コーチとしてやるべきことや、やり甲斐はたくさんあります。が、今このような情報社会だからこそ、コーチとしてきちんと勉強しなければいけないのです。選手の頭脳の方に、このままでは簡単に負けてしまう。自分の経験論だけで指導するのは、もう選手のニーズにはこたえられません。経験もむろん大事。でも。それプラス、科学というものがミックスされなくてはいけません。

 現在、人間そのものの体力が落ちて科学が上がっているのに、その状況を全く無視し、昔のやり方のままで選手に指導しようとするコーチが少なからず見られます。でも、選手は気がついているんです、自分のことですから。そして、ケガや障害から自身を守るため、自分で勉強しようという選手が増えているのです。そんな選手を指導しようと思ったら、もっと一生懸命勉強しなければいけないのは当然でしょう。

 これからのコーチは、正しい知識をしっかり身につけ指導にあたることが絶対的に望まれます。このままでは、恐らくコーチなどいらなくなってしまうでしょう。自分でわかっていれば聞くこともないし、教わることもないのですから。


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