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〜WELCOME to DUTCH OVEN WORLD
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ダッチ・オーヴンというと、あーっ、あのアウトドアで使う鉄鍋。カウボーイが愛用しているという、テンガロン・ハットかぶって焚き火相手に料理する時に使っている奴ですね、と言う人が殆どだ。確かにカウボーイが使っているのだけど、ダッチ・オーヴンはその歴史が物語るように、本来はアウトドアで使う調理器具ではない。ダッチ・オーヴンが何百年もの間愛され続けてきのは、台所であろうが野外であろうが火に掛けて置くだけで、美味しい料理が作れるからだ。ダッチ・オーヴンを使い慣れた人は、皆こう言う。 「僕にはお抱えの料理人がいる」 ダッチ・オーヴンの偉いところは、先ず文句を言わないという点だ。旨い中華料理を作るのには強い火力が欠かせないのだ、こんなコンロではシャキッとした野菜炒めが作れる筈がないじゃないか、と台所の貧弱なガス台を見て不平不満を言ったりしない。美味しい料理はまず素材選びから始まるのだ、とスーパーで買ったブロイラーの鶏肉を放り投げたりもしない。火力が弱ければ熱を溜めておぎない、それ程の材料でなくとも旨さを120%引き出して僕らを唸らせる。 ダッチ・オーヴンは、どんな料理でもこなす。西洋料理は得意だけれど中華は苦手だからと、シュウマイにだって尻込みしたりしない。ダッチ・オーヴンで作ったロースト・ビーフは英国人、カリカリ・ベーコンはアメリカ人に、クスクスはフランス人に、蒸し鶏のせご飯はタイ人に、焼き餃子は北京の人に、そして焼き鳥丼はあなた方にぜひ食べてもらいたい。 その上ダッチ・オーヴンは寡黙な働き者である。僕らが川辺でキャンプしながら、鱒釣りにうつつを抜かしている間も、黙って仕事に没頭している。イヴニング・ライズに熱くなっている間も、焚き火の熱を上手に使って夕飯作りに精を出している。まわりがすっかり暗くなった頃、疲れ果ててもどってきた僕らは、ダッチ・オーヴンが用意してくれた、湯気の立ち上るシチューと焼きたてのパンで身も心も温められる。ダッチ・オーヴンは目一杯遊んで、その上美味しいモノを食べたいという、欲張りなアウトドア・マンの心強い味方なのだ。
![]() アメリカで育った鋳鉄製の蓋付の鍋、ダッチ・オーヴンはアメリカの歴史に何時も見え隠れする。例えば1492年、コロンブスは新大陸に鉄鍋を持ち込んでいる。メイフラワー号でやって来た人は、この鉄鍋で旨いドーナツを揚げたという。アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンの母親、メアリー・ワシントンは遺言書の中で、鋳鉄製の鍋やフライパンの処分に関して指示をした、といった具合にである。 アメリカが独立を果たし、自由に大陸を移動できるようになると、彼らはダッチ・オーヴンを手に西へと向かった。この鉄鍋一つあれば煮る、焼く、炒める、蒸す、揚げる何でもこなせ、その上不思議なほど美味しく出来るのを知っていたからだ。開拓時代には幾つものダッチ・オーヴンが幌馬車に積み込まれ、草原の中の一軒家では薪ストーブの上のダッチ・オーヴンから漏れる匂いが家中に漂った。 僕がダッチ・オーヴンと出会ったのは、ネバダでカウボーイ修業をした時だった。カウボーイ達は朝は暗いうちからキャンプ・サイトを後にすると、夕方は暗くなるまで牛相手の仕事に明け暮れた。昼ご飯を食べる時間などない。夕方、馬に跨がって戻ってくるぼくらはへとへとに疲れ、腹が背中にくっついてしまいそうなほど空腹だ。けれどもキャンプ・サイトには、映画のように料理を用意して待っていてくる人はいなかった。代わりに、カウボーイが腕利きの料理人のように頼りにしていたのがダッチ・オーヴンだった。 サドルを下ろし馬に餌をやると、埃だらけの顔や体を洗うのももどかしく焚き火へと集まる。朝出掛ける時に材料を仕込んで置いといたダッチ・オーヴンの蓋と鍋の間から旨そうな匂いが漏れてくる。開けると盛大な湯気が立ち、晴れるととろとろに煮込まれたシチューが姿を現す。タマネギや人参、そして豆とベーコンなどは半日掛けてじっくりと煮込まれ、食欲をそそるチリ・コン・カーンになっていた。僕らは矢張りダッチ・オーヴンが焼いてくれたパンに、シチューを浸しながら食べた。 カウボーイ修業を終え、ダッチ・オーヴンを手に東京に戻ったのだが、それ以来僕とダッチ・オーヴンの生活が始まった。ダッチ・オーヴンが料理している間に、カウボーイは牛相手の仕事をしていたが、代わりに僕らはその間に好きなことをしていられる。心おきなく岩魚に向かってドライ・フライをキャストし、海に潜って珊瑚の美しさに目をみはり、木陰に吊したハンモックで昼寝をしていられる。遊び好きな食いしん坊にとって、ダッチ・オーヴンは力強い助っ人なのだ。 アウトドアでは勿論だが、僕は家でもダッチ・オーヴンを普通の鍋釜のように使っている。今だってアイマックに向かってこの原稿を書いているのだが、隣の台所から旨そうな匂いが漂ってきて、鶏が食べ頃になったのを教えてくれる。
タイミングよろしく玄関のチャイムが鳴る、なんて鼻が利く連中だろう。旨い鶏を食べさせてやるから、ワインをぶら下げて遊びに来ないかと、食いしん坊の友達に電話しておいたのだ。さて、アイマックのスイッチを切って、僕の料理人、ダッチ・オーヴンが腕によりをかけて作った鶏を皆で食べる事にしよう。 |
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