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アサリの酒蒸し
ダッチ・オーヴンはスロウ・クッカー、つまり時間を掛けてじっくりと料理するのが得意である。強火で手早く調理するより、材料を仕込んで火に掛けたら後は待っているだけで出来上がるというのがダッチ・オーヴンの真骨頂なのだ。 けれども、ダッチ・オーヴンが料理を作っている間に、ひとまず腹に何か入れたいという時がある。例えば、何時間か車を運転してキャンプ・サイトに到着し、手早くテントを張り焚き火もおこし、材料を仕込んだダッチ・オーヴンを火の脇にセットしてほっと一心地ついた時などだ。一、二時間待てば旨い料理が出来るのは知っているが、待ちきれない。そうした時、僕は酒蒸しをする。 例えば、アサリの酒蒸し。あらかじめ温めて置いたダッチ・オーヴンに日本酒をゴボゴボと注ぐと、酒はシュワーとばかりに湯気をあげるが、躊躇することなくスティーム・バスケットに盛ったアサリを入れて蓋をする。そのまま数分待ったら、蓋をずらして中を覗く。アサリが口を開けていれば出来上がり。蒸しすぎたら美味しくなくなる、バカーンと開いた瞬間が食い頃なのだ。 アサリを皿に移したら、アサツキ、なかったら万能博多ネギを細かく刻んでまぶせば出来上がり。口に含むと膨れ上がった身が弾け、熱い汁がはぜて拡がる。その瞬間、誰もが普通の鍋や蒸し器で酒蒸しにしたのとは、各段と違った旨さに、必ず“旨いや、これ”と呟くのだ。二つ目からは、身をとるのに楊枝やフォークやナイフなどは使わない。貝の殻で挟むようにして食べる。食べやすいと言うこともあるが、何より旨いものを食べているという感じがする。 ビールのグラスを傾けながら、アサリの酒蒸しというオードブルを堪能していると、もう一つのダッチ・オーヴンが漏れる匂いでメイン・ディッシュの出来上がりを知らせてくれる。酒蒸しを知っていれば、腹を空かしながら鉄鍋をじーっと見つめながら待っていたりする必要はない。食べ終わったら、アサリの旨みを吸い込んだ汁でオジヤやリゾットを、または汁を薄めて煮込みうどんを作って味わい尽くしたい。
1 プレ・ヒートしたダッチ・オーヴンに、酒をどぼどぼと注ぐ。 2 一気に蒸気が立ち上ったら、スティーム・バスケットに盛ったアサリをセットする。 ウンチクその1 一気に酒の蒸気で蒸し仕上げる。プレ・ヒートが足りなかったり、酒を入れすぎると湯気は元気良く上がらない。余り熱くプレ・ヒートすれば、酒を注いだ瞬間にダッチ・オーヴンにクラックが入ってしまう。熱し具合と、注ぐ酒の量との兼ね合いが料理人の腕の見せ所なのだ、と、この簡単な料理でもウンチクを語れる。 3 アサリがパカンと口を開いた時が食い頃。それ以上蒸すと、身が締まり過ぎてしまう。時間的には2〜3分がめど。 4 皿に盛り、刻んだアサツキを散らして、好みで醤油をほんの少量垂らし食べる。 ウンチクその2 どんな料理でもそうだが、素材が良い程美味しい。 酒蒸しにするアサリが死んでいるか、生きているかを知る方法がある。手のひらに7、8個を取っては転がしてみて、コロコロというのは生きている証拠。死んでいるアサリは、中がスカスカになっているからカラーンと空虚な音しかしない。一聴(?)瞭然である。沼津市内浦静浦の「魚茂魚店」、屋号「かまぼこや」。息子さんが教えてくれた遊び方だ。
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