<熱血秋田塾・九州キャンプ編/G大阪>

 日刊スポーツ評論家の秋田豊氏(45)が、開幕に向け準備を進めるJクラブをめぐる「熱血秋田塾・九州キャンプ編」。第3回はG大阪MF井手口陽介(19)を直撃した。プロに入ってからの昨年1年間で、メンタル面、技術面ともに大きく成長した有望株に、秋田氏はクラブでの定位置奪取を期待した。

 宮崎・綾町のG大阪練習グラウンド。私は思わず「あれが井手口選手でいいんだよね?」と周囲に聞いた。鮮やかに染め上げられた金髪。U-23アジア選手権での金メダル獲得にちなんだものというが、長谷川監督が厳格さで知られるだけに、たいした度胸だとある意味感心してしまった。

 しかし、昨年のこの時期も彼を取材し「秋田塾」で取り上げさせてもらった私には、外見以上の「変化」が見て取れた。練習からとにかく、手厳しい守備に努めている。元来、攻撃面の技術、ビジョンには定評があった。加えて守備にも格段の成長が見られ、選手としての幅を広げた印象だ。

 話をしてみると、さらに「変化」は明確になった。「アマとプロの違いとは」と問うと、井手口選手は「責任の重さ」と言った。彼はそこから「責任」という言葉を、何度も口にした。わずかな気のゆるみが、取り返しのつかないミスにつながる。そんなプロの試合を経験し、責任の重さを痛感したのだと思う。守備面での向上は、ユース時代よりはるかに強まった責任感に根差したものだろう。

 金髪の理由を問うと「気分転換です」と気恥ずかしそうに笑った。しかし、あれだけ派手なヘアスタイルをすれば、その分きちんと結果を出さないと批判されることも、重々承知していることだと思う。さらなる「責任」を自分に課し、不退転の決意でプレーする証しであるととりたい。

 G大阪には遠藤選手、今野選手と日本でもトップクラスのボランチがそろっている。同じポジションの選手にとって、定位置獲得が最も難しいクラブと言ってもいいだろう。それでも彼は「今年、定位置を取りに行きます」と断言した。

 その意気やよし。才能には疑いの余地はない。改善が必要だった守備面でも、のみ込みの良さが光る。G大阪で定位置を獲得し、リオ五輪代表だけでなく、日本代表をも引っ張る存在に成長してほしい。(日刊スポーツ評論家)