日本サッカー協会・前技術委員長の霜田正浩氏(50)が、18年W杯ロシア大会アジア最終予選のアウェーUAE戦を振り返った。

 同氏は、ザッケローニ体制から約8年間、日本代表を第一線で見守り続け、監督とメンバーのつなぎ役として力を注いできた。合宿では共に生活し、現在の日本代表を最も知る男が、ニッカンスポーツ・コム読者に代表への熱い思いをお届けします。さらに今後も、霜田氏の目に映った、代表以外のサッカー全般のことも伝えていきます。


 UAE戦前から、私の心の片隅には長谷部という偉大なキャプテンの存在があった。W杯予選の後半戦の初戦。昨年はホームで逆転負けを喫した相手に、アウェーでリベンジしないといけない大事な一戦。しかし長年ピッチ内外でイレブンを引っ張ってきた33歳の彼がいない。その大きな穴を28歳のマヤ(吉田)が埋めてくれたことに、心から感謝する。

 長谷部は、真面目な性格で、自分の役割を黙々とこなすタイプ。当初「本当はキャプテンをやりたくなかった」と、いろんなところから彼の本音が聞こえてきた。真面目な彼の性格を考えると、プレッシャーは相当あったはず。「ポストがその人を作る」という言葉がある。彼は、重圧を感じながらも、自分で考え、仲間のために行動することで、自分も成長し、チーム力も上げてきた。

 一昨年、W杯2次予選で、武藤や柏木、興梠、西川、槙野ら浦和レッズの選手が一気に増えた時期があった。代表合宿では20~30人が団体行動するが、宿舎では一般的に何人かでグループ行動することがある。食事会場もそうだし、朝の散歩グループなどもある。長谷部はそれを気にし、彼らがうまく代表にとけ込めるように、声を掛け、他の選手グループとうまく交流させるなど、ピッチ外でも細かいところまで気を使っていた。

 ハリルホジッチ監督は、規律を大事にすることで、厳格な人のイメージがあって、選手たちが意見を言うのをためらうことがある。そこで長谷部は選手の意見をまとめて監督に提案する。他の選手からすれば「長谷部さんに言えば、必ず進言してくれる」となる。長期合宿中に、士気高揚のため、たまに選手だけでの外食やミーティング、バーべーキューや焼き肉パーティーを開くことがあるが、それはキャプテンからの提案を監督が受け入れたもの。

 長谷部と違って、マヤはいじられキャラで、親しみやすいタイプ。優勝した11年アジア杯では最年少に近い年齢で、先輩に突っ込まれて笑いを取り、かわいがられた。そのマヤがザッケローニ、アギーレ時代をへて、中堅になった。UAE戦では、キャプテンマークを巻いて声がかれるほど、ピッチ上で仲間を鼓舞する姿が印象的だった。

 オシムさんは、千葉監督時代、若い阿部にキャプテンを任せて、成長させた。自分がかつてそうであったように若い選手や代表歴の浅い選手の気持ちも理解できるマヤが、年齢的にも、長谷部から主将を譲り受けてもおかしくないとも思う。