W杯ロシア大会に向けて新生ハリルジャパンが始動した。故障で離脱した人も含めて、異例の31人という大所帯。人数が多いだけあって、合宿地の大分はいつもより競争意識が高いように感じる。特に「常連組」ではなく「復帰組」。結果を出さなければ、という危機感が漂っている。

 「復帰組」の中で、注目はやはりこの人だ。92年生まれのプラチナ世代をけん引する、G大阪のFW宇佐美貴史(22)。2年4カ月ぶりにA代表へ招集された。昨季初めてベストイレブンにも選出。J屈指の点取り屋は、代表復帰したこの日を、どのように迎えたのだろうか。

 選出された翌日の20日、宇佐美は「うれしい気持ちはあったけど、感慨深いものはなかった」と話した。周囲からすれば、ようやく…という反応が多かっただろうが、常々「結果が出れば代表に行ける」と訴えていた22歳にとっては、招集される事がゴールではなく、スタートだというイメージがもう出来ていたのだろう。

 宇佐美はとことん追求するストイックな性格だ。今季は、安定した結果を出すため、体重管理にいそしんだ。大好きな甘い物を断ち、朝食にフルーツ、昼食に好きな物を食べて、夕食は炭水化物抜き。食事管理だけでなく「女の子が見るダイエット番組をずっと見てた。めっちゃ詳しくなりましたよ」。

 番組を見ながら感じる事がある。「ようお母さんとかも『痩せな』って言うてるんやけど、なんで我慢できへんのやろ?」。万年ダイエッターの私の胸に突き刺さる厳しい言葉を、軽やかな口調で投げかける…。「これでサッカーがうまくなるって思ったら、我慢できるんですよ。今は痩せやすい体質になってしまったから、今度はキープできるように調整しているところ」。目標を達成した時、そこをゴールではなく、次なる目標へのスタートだととらえるのが宇佐美貴史なのだ。

 今季は「得点王」を目標に掲げている。達成までの道筋をたどったとき、その先に見ているものは何なのか。引き続き、取材していきたいと思う。【小杉舞】

 

 ◆小杉舞(こすぎ・まい)1990年(平2)6月21日、奈良市生まれ。大教大から14年入社。同年11月からサッカー担当(西日本)。甲子園の売り子時代に培った体力には自信あり。