私が担当する清水には「DF歴」がわずか1年半でレギュラーに定着した選手がいます。その選手は高卒ルーキーのDF松原后(18)です。静岡の強豪・浜松開誠館高から加入し、今季は3月のナビスコ杯山形戦でプロデビュー。身長182センチの大型DFは対人の強さと正確な左足のキックを武器にピッチで躍動しています。

 守備陣にけが人が続出したこともあり、現在はリーグ戦で2試合連続フル出場中。18歳ながら、3バックの一角としてレギュラーに定着しつつあります。もともとFWでしたが、高校3年時にDFに転向。当時、一般スポーツ担当だった私は理由を聞くと「JリーグのFWには外国人も多い。プロになるには厳しいと思った」と話していました。今思えば、最善の選択だったのかもしれません。

 入団後はプロのスピードに慣れるまで苦労したようですが、今では「やれる自信はある」と力強く話しています。大まただった走り方は細かいステップワークを繰り返し行い、徐々に改善の方向へ。キックモーションも大きかったが、今ではコンパクトに足を振り抜くパスも習得しました。ミスが失点に直結しかねないポジション特有の動きを覚え、日々成長する18歳。クラブの強化担当者も「DFの経験が浅い分、新しく吸収することは多い。ここまでなるとは思っていなかった」と成長ぶりに目を細めています。

 実は松原の父・真也さんは元清水の選手で叔父の良香さんもアトランタ五輪に日本代表として出場。サッカー一家に育ったサラブレッドは清水のほかに、神戸や東京、J2磐田、水戸の5クラブから獲得オファーを受けました。「地元で活躍することが身内や友達も喜んでくれる」と、清水入りを決断した松原。5月にはプロA契約締結条件の公式戦450分出場を突破。自動車の免許も取得し、今月上旬には念願のマイカーも購入して着実に「プロサッカー選手」としての階段を上っています。

 まだまだプレーは粗削りですが、伸びしろは十分ある選手です。経験を積み、将来は日の丸を背負って戦うDFになることを期待しています。

 ◆神谷亮磨(かみや・りょうま)1985年(昭60)8月28日、静岡市清水区生まれ。幼稚園からサッカーを始め、高校は東海大翔洋(旧東海大一)でプレー。08年入社。11、12年はJ2磐田を取材し、今季から清水担当。