次代のスターたちがしのぎを削るU-21欧州選手権が6月30日(日本時間7月1日)に閉幕した。決勝はスウェーデンとポルトガルが互いに譲らず、0-0からPK戦に突入。最後はPK4-3で伏兵スウェーデンが優勝を飾った。ドイツ協会A級ライセンスを持つ指導者で、今大会をチェコで取材した本紙・中野吉之伴通信員が大会を振り返り、現在のサッカー界のトレンドについて考察した。

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 今年のU-21欧州選手権はスウェーデンが優勝を果たした。戦前の予想ではA代表を多くそろえるポルトガルを、ドイツ、イタリア、イングランドあたりが追うのではと予想されていた。だが決勝戦ではその優勝候補を相手にスウェーデンが奮闘。結果だけではなく、内容でも上回った。

 ボール保持率はポルトガルの方が高かったが、スウェーデンの組織的な守備はほとんど崩されることなく、素早い攻守の切り替えで決定機を作りだしていた。PK戦での優勝だが、ゲームを優勢にコントロールしていたのはスウェーデンだった。

 今大会の4強に入ったデンマークにも当てはまるが、特別な選手がいたり、センセーショナルな戦い方をしたわけではない。人数をかけて守り、機を見て素早いカウンターを仕掛ける。相手が守備を固める前にFWの選手にパスを当ててシンプルにゴールを狙う。乱暴に言えばそれだけのことだ。

 彼らは「自分たちに出来ること」と「出来ないこと」をしっかりと把握している。自分たちの現状を理解した上で、強豪国と対等以上に戦うにはどうしたらいいかを模索し続けている。サッカーは相手がいるスポーツ。その中での駆け引きが重要な意味を持つ。格上のチームにボールを保持され続けても、ゴールを奪われなければいいのだ。

 ただ、守備に労力をかけると、攻撃へスムーズに移行できないことが問題となる。だが守りながら神経を研ぎ澄ませ、1試合に何度かの決定的なチャンスを作り出すほうが、なんとなくの攻撃を何度も仕掛けるよりも、よほど効果的だ。欧州列強の持つしたたかな強さは、育成年代からこうした積み重ねをしてきているから身につくのだろう。

 一方で技術のある選手を輩出するのが強みなら、それを生かしたサッカーを目指す。準優勝のポルトガルがそうだ。トップ下のベルナルド・シウバ(20=モナコ)がさまざまな場所に顔を出して起点を作る。技術のある中盤の選手が相手を引き付けながらボールを前線に運ぶ。また今大会はつなぎだけでなく、相手守備の裏をつくパスなど攻撃に変化もつけていた。

 育成において大事なのはやみくもにトレンドを追い続けることではないと思う。自分たちの特徴・立ち位置・武器を詳細に分析した上で、世界サッカーの潮流を取り入れることが大切だ。世界最先端の戦術はどんどん洗練されていく。しかし、そのために毎回、自分のチームの方向性を白紙に戻し、スタートしなおすということはないはずだ。

 取り組んだものをベースに蓄え、その上で自分たちの強さを発揮できる方向性を探っていく。ちまたをにぎわす「ポゼッション」か「縦に速いサッカー」かの2極論ではなく、これまでポゼッションを重視してきたなら、それを武器として残した上で、縦への速さというバリエーションを加えていかないとプラスにはならないのではないだろうか。

 「継続は力なり」という。では何を継続し、何にメスを入れるのか。ダメだったことばかり気にするのではなく、うまくいったことやうまくいきそうだったこともしっかりと評価し、継続しなければ、そこに成長は生まれない。今大会を通して、そうした最も根源的なことの大切さをあらためて考えさせられた。【中野吉之伴】