あらためて思う-。W杯予選は過酷だ。

 日本代表を追いかけて、シンガポールからカンボジアへと移動してきた。06年W杯ドイツ大会の予選から、10年南アフリカ、14年ブラジルと取材を続け、アジア予選は今回が4度目になる。いろんな国に行ったけれども、初めて来たカンボジアの首都プノンペンは刺激的だった。

 新聞記事には17日カンボジア戦の会場が慣れない人工芝だとか、ボールが日本では見たこともない現地社製で昔にあった手縫いのような「DONG LUC」だとか。ピッチ内のことを触れているが、それはそれは、街の様子も驚くことがたくさんある。

 現地に着いて2日目の14日のこと。街ではタクシーがほとんどつかまらない。市民はバイクの荷台に乗せてもらうバイクタクシーか、バイクに貨車を付けたトゥクトゥクを利用する。さすがにノーヘルで猛スピードを出すバイクタクシーは怖いから、トゥクトゥクを利用したら、しばらく走ると道路横の屋台に停車した。そこにはコーラの空き瓶が並び、中には黄色い液体が。運転手は1ドル札(現地はUSドルが流通している)を店主に渡すと、1本のコーラ瓶をもらってバイクの燃料タンクに注いだ。

 そう、そこは即席のガソリンスタンドだったのだ。すぐ側にはタバコを吸うオッサンに、炭火でなにやら料理をする屋台。う、う、ウソでしょ…。いつ爆発するか分からない恐怖。取材前に、ものすごいスリルを味わった。

 取材が終わり、会社に電話で報告する際も大変だ。強盗やひったくりが多発し、特にスマホは狙われやすいという。スタジアム横で電話をしていると、優しいお婆ちゃんが身ぶり手ぶりで「盗まれるから、こんなところで電話したらダメ」と教えてくれた。現地在住の日本人によると「日本代表が到着して、ここ2~3日でも20件は被害に遭っている日本人がいる」とのこと。現に代表取材班にも、被害にあった人がいる。

 とはいえ、ホテルまで戻ってから会社に連絡したのでは締め切りに間に合わない。スタジアム横に座り、原稿を書いていると興味本位でたくさんの人が集まってくる。パソコンは盗られないか? 携帯は? 財布はあったよな? なんて考えていたら、原稿執筆どころではなくなってきた。

 やはり、W杯予選は過酷。アウェー戦は選手も大変だけど、記者だって大変なんです。


 ◆益子浩一(ましこ・こういち)1975年(昭50)4月18日、茨城県日立市生まれ。00年大阪本社入社。04年からサッカー担当で、W杯予選は今回が4度目。なかなか行けない国も含め、取材では50カ国以上を訪れたが、なぜかハワイは行ったことがない。ハワイで日本代表の試合をしてくれないかなぁ…。