東京の弟分が苦戦している。今季からセカンドチームとしてJ3に参入した東京U-23が、第4節終了時点で開幕4連敗。同じくセカンドチームのG大阪が2勝1分け1敗、C大阪が2勝2敗と互角以上に戦っているのに対し、結果が出ない。それでも、立石敬之GM(46)はキッパリと言い切る。「今年1年で終えるつもりはまったくない。ここでの成果が出るのは5年後だ」と目先の結果にはこだわらない。

 育成という観点から、公式戦の場で若い力を計れることは大きい。下部組織の東京U-18の選手と特別指定選手を含め現時点で7人が登録され、実際に出場している。高校3年生になる年に、J3を経験することは1選手にとって大きい。「公式戦でやれることはすごく大きい。ユースの選手たちも、これだけやれるんだということが分かった。実際にやってみないと分からないことがたくさんある」と同GMはいう。

 もしかしたら、その潜在能力に気づかれることなくプロ入りせず大学へ進学していたかもしれない選手が、裾野を広げたことによって発掘されやすくなった。若き才能の可能性を広げる意味で、セカンドチームの役割は大きい。

 もう1つある。今季東京U-23のホーム戦は、味の素フィールド西が丘(北区)を中心に、夢の島競技場(江東区)、そして駒沢公園(世田谷区)といった東京23区内で開催される。トップチームの練習場や本拠地の味の素スタジアムがあるのは23区外の「西」だった。これまでホームタウンながら、なかなか足を伸ばせなかった「東」で、「FC東京」を掲げられることはクラブとして大きな意味を持つ。

 実際に、ホーム開幕戦前にクラブスタッフが西が丘周辺の王子駅などでチラシ配りをした際には「いよいよですね!」と温かい声をかけられたという。都心にはなかなかつくることができない、練習場やスタジアム。東京という大都市をホームタウンにしているクラブだからこそ抱えた課題をクリアするために、一役買える。

 ここまでは、U-23日本代表の10番を背負うMF中島翔哉(21)や、OA枠(24歳以上)ではW杯2大会出場の元日本代表DF駒野友一(34)、10番のMF梶山陽平(30)が出場する豪華な顔ぶれも、東京U-23の魅力の1つ。J1での活躍を目標にしているトップチームの選手からすれば本意ではないかもしれない。しかし試合に出るには、肩書も経歴も関係ない。だからチーム内では「トップ」や「ユース」といった区別する言葉を禁止した。

 誰かがやったことがない新たな試みには障害が付きもの。初勝利の生みの苦しみは、まだまだ序章にすぎないかもしれない。しかし、クラブの大きな挑戦は、東京にとっても日本サッカーにとっても価値のあることだと思う。【栗田成芳】

 ◆栗田成芳(くりた・しげよし)1981年(昭56)12月24日生まれ。サッカーは熱田高-筑波大を経て、04年ドイツへ行き4部リーグでプレー。07年入社後、スポーツ部に配属。静岡支局を経てスポーツ部に帰任。14年W杯ブラジル大会取材。今季のJ担当クラブは東京、甲府、東京V。