Jリーグは7月1日から夏の選手登録期間(移籍ウインドウー)が開き、各クラブが補強を進めています。この時期は多くの方が選手の移籍動向を気にかけているのではないでしょうか。

 J2清水は徳島FW長谷川悠(29)を完全移籍で獲得。広島から期限付き移籍でDFキム・ボムヨン(25)が加入しました。新戦力としてチームに加わった選手はスポットを浴びる機会が多いと思います。しかし、カテゴリーを下げて移籍した選手は注目される機会が一気に少なくなります。

 清水ではMF八反田康平(26)がJ3大分へ、FW加賀美翔(22)がJ3藤枝に期限付き移籍。MF水谷拓磨(20)もFC今治に育成型期限付き移籍しました。私は出場機会を求めて移籍を決断した3人の中で特にFW加賀美に注目しています。

 ユース出身の加賀美は13年にトップ昇格。プロ入り後は出場機会に恵まれず、在籍3年半で公式戦出場はわずかに3試合。ただ、出場した2試合で得点を挙げました。最大の特徴は得点感覚がずば抜けていることです。清水のエースFW鄭大世(32)も「ゴールを決めるという部分ではマネできない。そこは本当にすごい」と絶賛するほど。今季の練習試合では17試合出場で16得点。3度もハットトリックを達成しました。相手が大学生やJFLのチームが多かったとはいえ、決定力の高さは数字が物語っています。

 得点以外でのプレーの質は決して高かったとは言えません。ただ、FWはゴールを決めるポジション。結果を残し続けても公式戦に出場できないのはFWにとって最も悔しいことだと思います。

 J3藤枝に移籍が決まった際に、加賀美はこう話していました。「自分の課題が多いことは分かっているけれど、練習試合でも結果を出し続けてきた。その部分を見てほしかった。今、モヤモヤした気持ちでやるよりも、環境を変えて勝負したい。J3は厳しいし、甘さは許されない場所。まずは結果を残し続けることを大前提にして色々学びたい。最終的にはここ(清水)に戻ってきたい」

 藤枝では加入からわずか5日でリーグ戦デビュー。得点は奪えませんでしたが、苦手だった前線からの献身的な守備でチームの勝利に貢献しました。藤枝では人生初の1人暮らしを始めたといいます。 「何から何まで全部自分でやるから大変だけれど楽しみですよ。また余裕があったら遊びにきて下さいね」。試合後、そう話した加賀美の晴れやかな表情が印象的でした。加賀美には一回り成長して戻ってきてほしい。そして、またオレンジのユニホームを着て、今度は主力として活躍する姿を見てみたい。武者修行に出た若き点取り屋の今後の活躍が楽しみです。【神谷亮磨】

 ◆神谷亮磨(かみや・りょうま)1985年(昭60)8月28日、静岡市清水区生まれ。幼稚園からサッカーを始め、高校は東海大静岡翔洋(旧東海大一)でプレー。08年入社。担当は11、12年にJ2磐田、13、14年にアマチュアサッカー、15年から清水。