「現場発」、このコラムの名前通り、現場からお届けします。中東はUAE、アラブ首長国連邦の都市アルアインからこんにちは。

 日本代表のW杯アジア最終予選UAE戦(23日)の取材をするため、この地に滞在しています。

 内陸部、オマーンとの国境に近い都市アルアイン。UAEの2大都市、アブダビとドバイから車で約2時間かかります。日本との時差は5時間。大一番は23日午後7時半キックオフ。日本時間24日午前0時半です。

 日本代表の選手たちもアブダビとドバイの空港から、バスやハイヤーでアルアインに入りました。日本や欧州各国からどちらかの空港に着き、そこから約2時間の移動を強いられました。初戦で不覚を取った難敵と対戦する前に、ひと苦労です。

 私は高層ビルが立ち並ぶドバイから、砂漠の中を一直線の高速道路を移動して来ました。乗せてもらった車は、強風でハンドルを取られそうになりながら進みます。道には砂漠の砂が、風に吹かれて波のような動きをみせていました。

 黄色い砂漠の“荒波”を乗り越えて足を踏み入れたオアシスの街アルアインは、緑豊かで落ち着いた都市です。ただ、相手は日本をこの地に誘い込み、のみ込もうとしているように感じます。

 この最終予選、UAEはここまでホーム3試合をすべてドバイで行ってきました。日本を迎えたこの一戦だけを、主力選手の庭、強豪アルアインの本拠地ハッザ・ビン・ザイード・スタジアムに指定してきました。

 日本は長い間、驚異的な勝率を誇る埼玉スタジアムでW杯予選のホーム戦を戦っています。ただ、昨年9月にUAEに敗れ、同スタジアムでのW杯予選不敗神話は18試合で途切れました。

 アジアでも上位の力を示し続ける日本は、ホーム戦の都市と会場選びで相手に揺さぶりをかける必要などなく、この10年ほどはデンと構えて、聖地ともいえる埼玉で試合を続けてきました。

 あの埼玉で、サポーターが作り上げる最高の雰囲気の中、何度も取材し、埼玉の力は十分に分かっているつもりです。

 ただ、UAEを含めたライバル国の台頭から目を背けるわけにはいきません。今後は開催地と会場の選定も勝負の一手とし、地の利を最大限に生かす手も考えなくてはいけない、そんな時がくるのかもしれません。

 砂漠のオアシスに珍しく降った雨を見ながら、ふとそんなことを考えてしまいました。


 ◆八反誠(はったん・まこと)1975年(昭50)岐阜県生まれ。98年入社。06年からサッカー担当に。途中、プロ野球中日担当も兼務。14年1月から東京勤務。日本サッカー協会やJリーグなどを担当している。