立場が人を育てる。アルビレックス新潟でそれに当てはまる選手が、MF小泉慶(21)だ。

 今季、チーム最年長のMF本間勲(35)とともに、副主将に就任。主将のDF大野和成(27)を支えている。

 開幕からボランチでスタメンに定着した。14年の入団時から着けていた背番号25は、今季から8に変わった。03年から05年まで山口素弘(現解説者)、13年から16年まではレオ・シルバ(31=鹿島)が背負った大黒柱の番号。「プレーでも、精神面でも、レオのような存在になりたい」。伸び盛りの21歳は、期待を励みに感じている。

 練習中も試合中も、感情をあらわにすることはない。相手との球際の争いは淡々とこなし、際どい判定にも冷静に対応する。そこに今季は少し変化が見えている。

 ボランチのコンビを組むルーキーの原輝綺(18)には、練習中からさかんに話しかける。練習後のクールダウンで肩を並べてランニングをする光景が日常になった。大野、本間らにも自分から意見を求めに行く。

 「特に考えてやっているわけじゃないですけど、自分から何かすることは必要かなと」。自らの行動について、多くを語るわけではない。ただ、果たすべき役割は、きっちりと胸中に収まっている。

 14年の入団会見時、自己紹介のあいさつで「本田圭佑です」とかました。サポーターを前にした激励会では、長渕剛の「とんぼ」を熱唱。肝の据わったルーキーという印象はあったが、10代らしい背伸びも感じられた。

 チームの看板選手になった今、そんな肩に力が入った雰囲気はなくなった。第6節終了時で2分け4敗と、未勝利にあえぐチームにあって、責任を使命とするたくましさが目立つ。

 現状の苦闘に「俺がもっとボールを奪わないと」と、まず自分に目を向ける。試練を力に変えるずぶとさはある。それが低迷するチームを救う。【斎藤慎一郎】



 ◆斎藤慎一郎(さいとう・しんいちろう)1967年(昭42)1月12日、新潟県出身。15年9月から新潟版を担当。新潟はJ2時代から取材。サッカー以外にはBリーグ、Wリーグのバスケット、高校スポーツなど担当。