スペインの名門バルセロナが公認する「FCバルセロナスクール葛飾校」と、日本で唯一のバルセロナ公認サポーターズクラブ「ペーニャ・ジャパン」との協定調印式が、4月2日に実施された。

 バルセロナは05年からトップチームの戦術や哲学に沿った練習などを世界の子どもたちに普及させるため、公認スクールを展開している。日本では福岡校に続いて、15年に東京・葛飾校が開校された。漫画「キャプテン翼」の作者、高橋陽一氏の出身地。主人公の大空翼がバルセロナに所属しており、縁のある地でスタートをきった。

 ペーニャ・ジャパンは03年に設立し、会員数は400人を超える。トップチームの応援だけでなく、アジアで3つしかないバルセロナ公認サポーターズクラブとして、バルサの人気向上や哲学の普及に尽力してきた。

 両者の協定により、相互企画も生まれる。ペーニャ・ジャパンの人脈を生かし、葛飾校単独でのスペイン遠征が実現し、現地での実戦機会が得られる。また、ペーニャ・ジャパンが月1回程度、日本で行ってきた“講習会”にスクール生も積極的に参加できる。スペイン語講座(カタルーニャ語)や、スペイン風土の勉強会、時にはバーベキューなども開催され、スペイン人なども含めた交流機会は、環境適応能力も磨かれそうだ。バルセロナは総合スポーツクラブのため、スクール生にサッカーだけでなくバスケットボールなど異種競技を体験する計画もある。バルセロナの下部組織で活躍していた第2の久保建英(たけふさ、15=現東京ユース)のみならず、第2のメッシ(アルゼンチン代表)育成へ-。大きな夢実現に向けた本格稼働となりそうだ。

 ペーニャ・ジャパンの山田晃広副会長は「これからは、バルセロナスクールの子どもたちの試合も応援していきたい。でも本当の目的はそこではない。スクールに通うのは幼稚園生から小学6年生まで。中学生以降はそれぞれの道に進む。スクールだけで終わりではなく、そこからの大事な時期にも、バルセロナの哲学を忘れずに、サッカーを続けていってもらうことを一番重要視しています」。

 FCバルセロナスクール葛飾校もサポートに感謝し、さらなる発展を誓う。同校責任者で、スペインでも指導経験があるアンドレウ・セラロウス・テクニカルディレクター(TD)は「一番大事なことは、サッカーは上達するだけでなく、バルサの哲学をしっかり理解して、人間として道徳があり、優しさがある、そんなサッカー選手になってもらいたい」と理想論を明かした。

 今年は5月と11月に本家のバルセロナクリニックに参加。7月には選抜メンバーが久保やメッシが基礎を築いた下部組織カンテラの選手寮で生活しながら練習参加する予定だ。12月にはドミニカ共和国で開催される国際トーナメントに参戦し、国際経験も積む。

 スクール生が乗るバスには「バルサの5カ条」が掲示されている。

 <1>尊敬

 <2>努力する姿勢

 <3>謙虚な人間

 <4>チェレンジする野心、向上心を持つ

 <5>チームで戦う

 メッシも心にとめる精神での“一貫教育”。セラロウスTDは「日本人選手のポテンシャルは高い。もっと世界で活躍できる可能性があるし、このスクールを卒業した生徒たちにも、そうなってもらいたい。タケフサが見本となって活躍しているところは見ていますし、こういうふうになるんだ、バルサで活躍するんだという夢というのを彼が実現してくれているので、いい目標ができています」。

 私も夢を成就させるには、具体的な目標を持つことと、能力を引き出してくれる人や環境との出会いが大事だと感じている。そんな出会いのチャンスも広がりそうだ。漫画の世界ではあるが、大空翼がロベルト本郷という指導者に出会い、世界的プレーヤーに成長したように。【鎌田直秀】



 ◆鎌田直秀(かまだ・なおひで)1975年(昭50)7月8日、水戸市出身。土浦日大-日大時代には軟式野球部所属。98年入社。販売局、編集局整理部を経て、サッカー担当に。相撲担当や、五輪競技担当も経験し、16年11月にサッカー担当復帰。現在はJ1鹿島、J2横浜FCなどを担当。2歳の長男と2人での留守番が、最高のリラックス。