中断が明けてJ1リーグが再開する。最下位の18位に沈み、6連敗中と出口が見えないトンネルに入っているアルビレックス新潟は30日、東京と対戦する。

 中断期間中に3選手を補強した。名古屋からDF大武峻(24)MF磯村亮太(26)、メキシコ2部カフェタレロス・デ・タパチューラからFWドウグラス・タンキ(23)だ。

 移籍加入会見での大武が印象的だった。「J2で出場機会がなかった私にチャンスをくださった新潟のみなさんに感謝しています。チームの厳しい状況は理解しいます。残留することで恩返しをしたいです」。今季、J2名古屋で出場は1試合。出場機会を求めての移籍であると同時に、新潟には守備の立て直し役として迎えられた。

 新潟は18試合を消化してリーグワーストの39失点。189センチ、86キロの大武には自陣ゴール前での的確な守備と、守備陣を統率する指示が求められている。どちらも自身のストロングポイントでもある。

 試合出場の機会を手にするチャンスを与えられた。その新天地は、残り16試合すべてで勝ち点獲得を求められるほど、J1残留に向けて厳しい状況に置かれている。期待を持つ周囲の視線の中、当然プレッシャーもあるだろう。ただ、やりがいは間違いなく感じているはず。

 「練習に加わって、(新潟は)勝てなくなり、選手が少し自信をなくしている感じがしました。自信を持ってプレーすることが大切」。大武は昨季名古屋でJ2降格を体験した。そのときの苦い思い出が、今は新潟で戦う上で生きる。

 1度は目標を失いかけたが、再びピッチに立つチャンスを得た。そこが土壇場に追い込まれたチームであるからこそ、逆に自分の力を発揮しがいがある。「泥舟」と見下す目もあるかもしれないが、修正し、引き上げることができればまさしく救世主。大武はポジティブさを前面に出しながら、新潟の一員になった。

 東京戦、大武の新潟デビューの可能性が高い。チームを救って「男」になるストーリーの始まりにもなるかもしれない。【斎藤慎一郎】


 ◆斎藤慎一郎(さいとう・しんいちろう)1967年(昭42)生まれ、新潟県出身。15年9月から新潟版を担当。新潟はJ2時代から取材。サッカー以外にはBリーグ、Wリーグのバスケット、高校スポーツなど担当。