今月2日、ジュビロ磐田MF松井大輔(36)がポーランド2部のオドラ・オポーレへ完全移籍することが発表された。フロントからはこのまま磐田でプレーを続け、将来的にはスタッフやアンバサダーとしての“終身雇用”も提案されていたが、松井の決断は海外再挑戦だった。

 発表翌日の3日に行われた会見で、松井はさまざまな移籍の理由を語った。その中で、印象に残った言葉は「毎試合ちゃんと試合に出て、結果を残すことがプロのサッカー選手だと思う」だった。14年、当時J2だった磐田に加入。同年は主将も務め、リーグ36試合に出場。15年も26試合に出場し、J1復帰に貢献した。しかし、4年目の今季はMF中村俊輔(39)の加入もあり、7試合の出場にとどまっていた。

 起用法を巡って不満を聞いたことは1度もない。事実、松井は「このままいけば上位、優勝争いに食い込めるのではというチーム状況だったので『ここに居たい』という気持ちはすごくあった」と、磐田に残る選択肢もあったと明かしている。だが、会見で語った「出場し続ける」というプロとしての理想と現実の間で、常に葛藤があったのだと思う。

 会見前、ヤマハスタジアムでの練習でそれを象徴する出来事があった。松井は練習後、中村俊にFKの蹴り方を聞いていた。中村俊は「急に? と思ったけど、向こうで蹴る可能性もあるからって。(蹴る上での)心構えみたいなものを話した」と明かした。決して遊びではなく、新天地に向けた準備だった。

 くしくも、松井が移籍を発表した日、同じ36歳の東京MF石川直宏が今季限りでの引退を発表した。キャリアに区切りをつける同世代の盟友も増える中、松井はもう1度ピッチで躍動する自身の姿を思い描き、海を渡った。

 過去にはフランスやロシア、ブルガリアなど海外7クラブを渡り歩いた経験もある。まだまだ、プロサッカー選手として輝き続けてほしい。【前田和哉】


 ◆前田和哉(まえだ・かずや)1982年(昭57)8月16日、静岡市生まれ。小2からサッカーを始め、高校は清水商(現清水桜が丘)に所属。10年入社。昨年までは高校サッカーを取材し、今年から磐田担当。