初めまして。11月から新しくサッカー担当になりました松尾です。まだまだ慣れない現場に四苦八苦しているところですが、よろしくお願いします。

 文化社会部から異動し、Jリーグから高校、大学までプロ、アマチュア含めて幅広く取材中です。同じ「サッカー」ですが、プロとアマでは契約や社会的立場など、違いは多々あります。熱心なサポーターの存在もその1つ。もちろん、アマからプロへと変わるチームもあり、一概には言えませんが、先日、プロのサポーターの熱さを感じる出来事がありました。

 代表ウイークでJリーグが中断していた11月のある日、柏レイソルのサポーター約50人が、クラブのホームスタジアムである日立柏サッカー場に集まっていました。何が始まるのかと思いきや、全員でペンキとローラーを手に、スタジアムの壁をクラブカラーの黄色に塗りはじめたのです。

 塗ったのは普段自分たちが選手たちに熱い声援を送っているホーム側ゴール裏の白い壁。12年に2階席が増設された際にできたもので、試合時は横断幕などで埋め尽くされていた部分です。有志たちが「観客席をチームカラーである黄色で埋め尽くして、より雰囲気を盛り上げて選手を応援したい」という願いを申し入れ、これをクラブが許可。ついに実現に至ったのです。

 昼すぎから作業を始め、高さ約2メートル、長さは約60メートルの白い壁はみるみるうちに真っ黄色に染まりました。ムラの出ないよう1度乾かして2度塗りもしっかりと行い、夕方までにはほとんどの作業が終了しました。

 当時リーグ戦は残り3試合。柏にとってはアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場圏内である3位以内を目指して戦っている時でした。「柏から世界へ」。この合言葉のもと、柏サポーターは選手とともに戦っています。下平監督も「ありがたいですね。いつもいろんなことを考えてくれて、それが伝わってくるので、なんとか応えたい」と喜んでいました。

 今回の件は、日立柏サッカー場がクラブの所有物であったからこそ実現しました。市や県の施設をホームスタジアムとするクラブでは、そう簡単にサポーターが壁にペンキを塗ることはできません。柏はそういったアドバンテージをうまく活用し、クラブ、選手、サポーターの距離をまた1つ縮めました。

 その後のリーグ戦では、真新しく黄色に輝く壁がサポーターの応援を際立たせていました。惜しくも3位以内とはなりませんでしたが、ACL出場へ望みをつなぐ4位をキープ。自力で同出場権を得られる天皇杯も勝ち残っています。

 実は今回、柏サポーターは白い壁以外に、バックスタンドにある各入り口の青い手すりも黄色に塗りました。「全部黄色にしてスタジアムの雰囲気を高めたいんだ」。クラブ、そしてスタジアムを愛する。サポーターの熱い姿に心を打たれました。【松尾幸之介】


 ◆松尾幸之介(まつお・こうのすけ)1992年(平4)5月14日、大分市生まれ。中学、高校はサッカー部。中学時は陸上部の活動も行い、全国都道府県対抗男子駅伝競走大会やジュニアオリンピックなどにも出場。趣味は温泉めぐり。

黄色のペンキで塗られた日立サッカー場のゴール裏の壁(撮影・松尾幸之介)
黄色のペンキで塗られた日立サッカー場のゴール裏の壁(撮影・松尾幸之介)
スタンドの壁を黄色のペンキで塗る柏レイソルのサポーター(撮影・松尾幸之介)
スタンドの壁を黄色のペンキで塗る柏レイソルのサポーター(撮影・松尾幸之介)