「現場発」、このコラムの名の通り、現場からお届けします。

 今回は日本代表を追い掛け、ベルギーのリエージュからボンジュール、こんにちは。寒波到来でまだまだ氷点下の寒さ。日本との違いに、震え上がる毎日です。

 ここは南部ワロン地方の代表都市。ベルギー第4の街の玄関口には、近代的な素晴らしい建築、09年完成のギュマン駅がずどん。一見の価値ありです。玄関口から見どころ満載の、過ごしやすい街に滞在中です。

 いい仕事をするためには、もぐもぐタイムが必要不可欠。これ、もはや日本の常識。北海道は北見発、笑顔で頼もしく世界と渡り合い、堂々の銅メダルまで駆け上がった、カーリング女子日本代表が証明済みです。

 笑顔が印象的なあの雄姿をテレビで見てからというもの、イチゴが気になって仕方ありません。

 早速、街のくだものと野菜を扱うお店で1パック購入。約5ユーロ(約675円)ナリで、大粒イチゴが15個のお買い得品をチョイス。

 店主からは「これはベルギーのイチゴ、おいしいよ」と念押しされ、メルシーと笑顔で返して早速ほおばりました。

 はっきり言って、日本の超高品質のイチゴとは違います。はい。確かにおいしいですが、甘い日本のいちごと違い、野性味あふれ、甘酸っぱいのです。粒もギュギュッと凝縮され、追い掛けてくる甘酸っぱさに、きゅんとなり、ある人物のイチゴ論を思い出すのでした。

 あれは6年ほど前、大好きなロシアはモスクワでの出来事です。当時CSKAモスクワでプレーしていた、日本代表の本田圭佑選手に、日本の素晴らしさを語ってもらっていた時のことです。突然、話題はイチゴに。

 「海外でイチゴを食べたら、日本のすごさが分かる。日本ほど、甘くておいしいイチゴが食べられる国はないですよ」

 確かに、ロシアのイチゴは、それほど真っ赤ではなく、大粒でどこか野菜っぽい大胆な味でした。帰国し、日本の至れり尽くせりの甘く、まるでスイーツそのもののイチゴを口にして感じたのは、これこそサッカーそのものではないのか。そんな考えでした。

 甘くて、どこか野性味を感じられないイチゴは、技術はあるが、たくましさに欠ける大多数の日本人選手のよう。一方で、世界に出て口にする、必ず酸っぱさが追い掛けてくるガッチリしたイチゴは、たくましく、個の強さがある海外のプレーヤーのよう。

 あれからかなりたちますが、今もその思いは変わりません。

 ベルギーの少し野性味あふれるイチゴをもぐもぐして、今日も日本代表の練習へ。そこには、半年ぶりに復帰した本田選手がいました。

 そして、ふと思うのです。

 彼のプレーや存在感。それは、確かにおいしいのですが何というか、繊細で、満ち足りた日本のイチゴとは一線を画すものです。

 本田圭佑という、いい意味での異物は、野性味あふれる、こちら欧州で食べるイチゴ。久しぶりに日本代表での本田選手を見て、そんな気になりました。

 おいしい日本のイチゴも大好きです。でも、非の打ちどころのない同じ味のイチゴがロシアでハリルホジッチ印のパックに23個並んでいても、5個で食べ飽きてしまいそうです。

 世界基準はむしろ、酸っぱさ強めで、どこか刺激的な荒ぶるイチゴ。金髪、金色のそれは、一粒で2度、いや、それ以上おいしいはずです。

 ふとそんなことを考えた、ベルギー・リエージュでのもぐもぐタイムでした。

 ◆八反誠(はったん・まこと)1975年(昭50)岐阜県生まれ。98年入社。06年からサッカー担当に。途中、プロ野球中日担当も兼務。14年1月から東京勤務。日本サッカー協会やJリーグなどを担当している。