鳥栖の元スペイン代表FWフェルナンドトーレス(34)は、8月19日名古屋戦も無得点でJ1出場7試合連続で不発に終わった。放ったシュート3本は、すべて決定機だったが決めきれなかった。それでも本人いわく「前回より今回の方がチャンスを作って、プレーは良かったと思う」。だがチームも敗れ、J2降格圏の16位に順位を落とした。浮沈のカギを握る大物助っ人には、早く覚醒してもらいたいと願うばかりだ。

 そんな試練の中、一筋の光明も感じさせられている。フェルナンドトーレスの加入後は、報道陣をシャットアウトする非公開練習が多い鳥栖だが、公開となった川崎F戦翌日の8月16日、リカバリー練習後に1対1で直撃する機会があった。ゴール量産が期待されながら、コンディションが上がらず、来日6試合ノーゴールの状況でのことだ。

 携帯電話をいじりながら下を向き、クラブハウスから出てきたため、不機嫌なのかなと思った。しかも記者ひとりで通訳もおらず、スペインのスター選手が初めて会う中年の日本人記者に快く対応してくれるのか? 素通りされるのを覚悟で「すみません、いくつか質問いいですか」と英語で話しかけてみた。

 すると、すぐ笑顔で立ち止まり、記者の目を見て、コンディションや次節のことなどの質問に丁寧に応じてくれる紳士ぶり。不調時は明らかな「取材拒否オーラ」を漂わす日本人Jリーガーもいる中で、その人柄に感心した。

 これは国民性なのか、一流選手ならではの強いメンタリティーなのか…。何事もそうなのかもしれないが、プレー以外の目に見えない普段の言動にこそ、人柄や魅力が表れるような気がした。

 マッシモ・フィッカデンティ監督(50)がフェルナンドトーレスについて「日頃のトレーニングから、人一倍のモチベーションで雰囲気をつくってくれる。笑顔を絶やさず何事もポジティブ」と話していたことも納得だ。リカバリー練習は、約15分程度のジョギングのみだったが、そんな短さでも先頭を走っていたのが印象的だった。前向きな姿勢は、必ず結果につながるはずだ。

 ◆菊川光一(きくかわ・こういち)1968年(昭43)4月14日、福岡市生まれ。福岡大大濠高-西南大卒。93年入社。写真部などを経て現在報道部で主にJリーグなど一般スポーツを担当。プロ野球などのカメラマンも兼務する“二刀流記者”。スポーツ歴は野球、陸上・中長距離。

ランニングする鳥栖FWフェルナンドトーレス(2018年8月16日撮影)
ランニングする鳥栖FWフェルナンドトーレス(2018年8月16日撮影)