サッカー・日本代表DF吉田麻也(30=サウサンプトン)が11日、自身のSNSに1枚の写真を投稿し、日本代表を引っ張る決意を示した。

森保ジャパンには今回が初招集。2度のW杯を経験し守備の要へと成長した主力は、今回、周囲からチームリーダとして期待される立場だ。

日本代表はW杯ロシア大会を境に、大幅に世代交代。今回は若手が多く、もちろんロシアで代表引退した長谷部もいない。

写真には、吉田の第2の故郷でもある名古屋と縁のある大物が並んだ。

楢崎正剛、田中マルクス闘莉王、そして「真ん中の人はスルーしていただいて」と、あえて注釈をつけた巻佑樹。4人で食事をともにした時の1枚だ。

楢崎は吉田が慕う兄というより、お父さん的な存在か。ともに代表でプレーするのが目標だったが、楢崎がW杯南アフリカ大会を区切りに代表を退いたため、実現しなかった。

高卒ルーキーで未熟だった吉田をすぐ後ろから叱咤(しった)し、成長させてくれた恩人。大きな存在として、吉田をずっと見守ってくれている。

当時、楢崎が、センターバックとしてまだまだ未熟な吉田にアドバイスする時、物差し、基準としていたのが、代表で一緒にプレーしていた闘莉王のやり方。吉田には、間接的に、闘莉王イズムが注入されているともいえる。

その闘莉王とは、代表でも名古屋グランパスでもすれ違いだった。それだけに、2つのチームで、ずっと比較されてきた。若い吉田は「闘莉王なら」という厳しい声を耳にすることもあった。乗り越えなくてはいけない身近な壁として、ずっと意識してきた存在だ。

ちなみに、明るい巻佑樹は、よき兄貴分で、あえて「スルーして」といじってもOKな包容力、人間味で吉田のよき理解者である。

吉田は写真にこう添えた。

「年寄り発言はしたくないですが、新しい選手たちのギラギラした瞳に当時の自分を照らし合わせてしまいます。僕もこの2人と一緒に代表でプレーするのをずっと目標にしてました!(真ん中の人はスルーしていただいて)未だに先輩たちの見えない背中を追いかけています!ということで絶賛時差ボケからの朝一投稿でした」

楢崎、闘莉王との代表でのプレーはかなわなかったが、2人から学び取った思いに、長谷部らから直接伝えられた気構えを乗せて、次世代に伝えていくことが、代表での仕事になる。周囲はそう見る。

ただ、吉田自身も、もう1度、この2人の背中を追い掛け続けた時の気持ちを思い出し、チャレンジすることが必要になる。

そんな意思表示ともいえる1枚の写真。重苦しい話にならないよう? 突っ込みどころ、ネタとして愛すべき先輩、巻佑樹を加えたところが、吉田のセンスであり、そしてそうさせる巻佑樹の魅力でもある。

たった1枚の写真だが、いろんな意味が込められている。

森保ジャパンは12日にパナマ(新潟・デンカS)、16日に強豪ウルグアイ(埼玉)と戦う。吉田はピッチ内外で何を示し、何をもたらしてくれるのか。2人、いや3人の先輩は吉田のプレーをどう見るのか。今から楽しみだ。【八反誠】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)


◆八反誠(はったん・まこと)1975年(昭50)生まれ。98年入社。06年からサッカー担当に。