浦和戦で「激闘5位以内」と書かれた垂れ幕を掲げる仙台サポーター(2018年10月7日撮影)
浦和戦で「激闘5位以内」と書かれた垂れ幕を掲げる仙台サポーター(2018年10月7日撮影)

予想を覆す躍進といっていいだろう。残り5試合、チーム人件費がJ1最下位レベルのプロビンチャ(地方の中小クラブ)と呼ばれるベガルタ仙台が、勝ち点42でJ1トップの経営規模を誇るビッグクラブの浦和レッズと並んでいる。シーズン開幕前に行われた本紙サッカー担当記者18人による予想順位では、半数に当たる9人の記者が仙台を15位以下と予想した。最下位18位が1人、自動降格圏の17位と予想した記者は3人もいた。19日の時点で、ACL出場圏の3位との勝ち点差はわずかに4。弱小クラブが本紙記者たちの予想に反して上位争いしているのにはわけがある。

9月に監査法人デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社が公表したデータによると、勝ち点1当たりのチーム人件費、同じく入場料収入の総計で表される「経営効率」で、仙台が最もコストパフォーマンス(CP)が良いクラブという結果が出た。Jリーグが開示した17年度のクラブ事業規模(営業収益)ランキングで1位浦和の79億7100万円に対して、仙台は17位でJ2の新潟より少ない27億900万円となっている。もっともフロントとしては安穏としていられない結果だ。湘南ベルマーレや北海道札幌コンサドーレなど同じような事業規模のクラブが軒並み経営規模を拡大させておりJ1に定着する意味でも、大口スポンサーの獲得が喫緊の課題となっている。そんなクラブが浦和、鹿島アントラーズとACL出場権を争っているのだからCPトップも納得がいく。

浦和戦の前半、ゴール直前に話し合う板倉滉(右)と野津田岳人(2018年10月7日撮影)
浦和戦の前半、ゴール直前に話し合う板倉滉(右)と野津田岳人(2018年10月7日撮影)

7日に行われたホーム浦和戦で象徴的なシーンがあった。1点ビハインドで迎えた前半、MF野津田岳人(24)のFKをDF板倉滉(21)が頭で合わせ1-1のドロー。野津田はサンフレッチェ広島、板倉は川崎フロンターレからのレンタル移籍組だ。出場機会に恵まれなかった将来有望な若手を集めて活躍の場を与え戦力として育て上げていくスタイルが定着しつつある。8月にはFW西村拓真(21)が、ロシア1部のCSKAモスクワに電撃移籍した。チーム生え抜きで今季11ゴールをたたき出した得点源をシーズン途中で手放すのは手痛いが、西村はクラブに相応の違約金を置いていった。渡辺晋監督(44)と強化スタッフの創意工夫が実りを結びつつある。【下田雄一】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サッカー現場発」)

◆下田雄一(しもだ・ゆういち) 1969年(昭44)3月19日、東京都生まれ。Jリーグが発足した92年に入社し写真部に配属。スポーツではアトランタ、長野、シドニー五輪などを撮影取材。17年4月に2度目の東北総局配属となり、同11月から仙台を担当。

移籍が決まり、セレモニーで仙台渡辺晋監督から花束を受け取るFW西村拓真(2018年9月1日撮影)
移籍が決まり、セレモニーで仙台渡辺晋監督から花束を受け取るFW西村拓真(2018年9月1日撮影)