<高校サッカー:鹿島学園2-1大津>◇5日◇準々決勝◇三ツ沢

 鹿島学園(茨城)が「無欲の勝利」で茨城勢では81年度大会の古河一以来、27大会ぶりの4強進出を成し遂げた。後半ロスタイムにMF小谷駿介(3年)がFKから決勝ゴールを決め、高校総体4強の強豪大津(熊本)を2-1で撃破した。10日に行われる準決勝への進出を想定しておらず、試合直後にはこの日の宿泊先すら決まっていなかったほど。無欲の快進撃で80年度の古河一以来、28大会ぶりの決勝進出を目指す。

 一瞬の静寂の後、一気に喜びが爆発した。後半ロスタイム、ゴールほぼ正面20メートル付近からのFK。小谷の右足から放たれた一撃が鮮やかな曲線を描き、大津ゴールを揺らした。「直前に相手GKが交代したことも気付かなかった。集中してた。生涯最高のFK」と話したこの日の主役は歓喜の輪に吸い込まれた。

 茨城県勢27大会ぶりの4強進出の原動力は全員サッカーだ。鈴木監督が「ウチは日替わりヒーローが生まれる」と言うように、今大会4戦9得点で得点者は6人。前半2分に先制点を奪い、ドリブル突破で決勝FKのきっかけとなる反則を誘ったFW忍穂井も「反則をもらった瞬間に小谷がやってくれると思った」と仲間への信頼感を口にした。

 快進撃の裏側では、ダークホースらしいドタバタが起こっていた。同監督は試合直後に「勢いよく勝ってきたけど、そろそろ厳しいかと思って今日より先の計画がなかったんで、実は今日の宿が決まってないんです。今朝(都内の)ホテルはチェックアウトしてしまったし…」と頭を抱えた。

 敗れた時点で現チームは解散の予定だったため、東京、神奈川、埼玉から集まっていた卒業間近の3年生は既に寮を引き払い済みで、鹿嶋市に戻ったところで宿無し状態。鈴木監督が「急いで決めないと」と話していた「寝床」が決まるまで選手は会場に待機し、準決勝が行われる埼玉スタジアムに近い、さいたま市内の宿舎が確保できたのは1時間以上も後だった。

 準決勝の相手は広島皆実。殊勲の小谷は「ウチの持ち味は美しい中でも強いサッカー。それができればどことでもやれる力はある」と意気込んだ。開幕戦を決勝の国立競技場で戦っており、今のチームの目標は「決勝まで勝ち進んで国立に戻ろう」。“聖地”への帰還まで、あと1勝だ。【菅家大輔】