<サッカーaiコラム:選手権のHEROたち>

 憧れの国立の舞台で開幕戦を飾るのは、過去6度の優勝を誇る名門・帝京。「すごく緊張すると思うけれど、国立でサッカーができる選手なんてそういないし、すごくいい経験になると思う」と笑顔で語ってくれたのは、2年生で前回の選手権も経験しているキャプテンのMF稲垣祥。

 昨年の選手権では1回戦で、優勝した広島皆実と対戦。試合は80分間で勝負がつかず、PK戦に突入。残念ながら4-5で敗れ、初戦で姿を消しました。その最後のキッカーを務めたのが稲垣だったのです。「練習では決めていたのに、本番では外してしまって…。あの場面ではすごく緊張していて、プレッシャーに負けてしまった。まだ精神的に甘かったんだと思います」。今でも脳裏に焼きついている強烈なシーン。すでに1年が経過しますが、あの悔しさはかたときも忘れることはありませんでした。

 3年になり稲垣は「(選手権で)PKを外して負けたという責任感みたいなものを感じている面が見られたので」という広瀬龍監督の意図もあり、キャプテンに任命されました。今となっては笑い話で変えられるようになりましたが、当時は「断ろうと思うくらい、嫌でした(笑)」と悩んだ時期もあったといいます。それでも、「先生に信頼してもらったんだから、その期待に応えたい」という一心で、試行錯誤を繰り返しながらも、ここまでチームをまとめあげてきました。今はキャプテンに任命されたことを心の底から感謝し、広瀬監督をはじめとする、お世話になった方々への恩返しを、と心に誓います。そのためにも、まずは初戦のルーテル学院戦に全力を注ぎます。

 都大会では決勝3週間前に右足中指を骨折し、万全の状態で臨むことができなかっただけに「チームの仲間に全国大会に連れていってもらった。だから今度は自分がみんなを引っ張っていきたい」と、意気込みます。キックオフまであとわずか。3年間の集大成となる選手権がまもなく、始まろうとしています。(サッカーai編集部・石井宏美)