<サッカーai:山梨学院大付1-0青森山田>◇11日◇決勝◇国立

 山梨学院大付が前半11分のMF碓井鉄平のゴールを守りきり、初出場で初優勝を決めました。9日の準決勝後、ゴールを決めたMF鈴木峻太は「今日は自分たちらしいサッカーが何もできなかった。試合のあとに、決勝はどんな相手が来ても、自分たちのサッカーをして、楽しもうとみんなで話し合いました」と話していましたが、その通りに決勝では山梨学院大付らしさあふれるサッカーを国立で披露。途中ケガで交代を余儀なくされたDF井上拓臣も「試合の入り方は、この3年間で一番良かった」と、自分たち良さを発揮し、その手で優勝をつかみ取りました。

 準決勝の後、彼らが決勝戦に期待していたことがもう1つ。それは「満員の国立でプレーしたい!」ということでした。準決勝でも2万人強の観客が集まりましたが、広い国立ではどうしても空席が目立ちました。「入場するときに、バックスタンドには人がかなり入っているのが見えて『山梨学院大付の応援も多いけど、矢板中央の応援もすごい数だな』と思ったのですが、振り返ってメーンスタンドを見てみると、空席が目立っていて…。僕たちは初出場で、有名な選手はいないし、あまり期待してもらえないのかもしれないけれど、せっかくだからもっとたくさんの人に見てほしい。FWとしては、向かっていくゴール裏に人がいないのは寂しいですね」と話していた伊東拓弥も、「今日はほとんどの座席が埋まっていたので最初はびっくりしました。うれしかった」と4万人を超えた大観衆に大喜びでした。

 念願だった横森巧監督の胴上げもできました。入学当初は、コーチを務める吉永氏が「最初は聞いていた話と全然違って、(辞めて)帰ろうかと思っていました(笑)。特に生徒と信頼関係を作るのが難しくて…。最初のころの彼らは、大人に対して不信感を抱いているように見えました。悩んで眠れない日もあったほどです」と言うほど、指導者と生徒の間には埋められない溝がありました。伊東も「最初のころはホームシックにはなるし、関東出身と関西出身の間には変な壁があってギクシャクしていました」と、3年前は選手権優勝など考えることもできなかったと振り返ります。

 それが今では「今日は本当に素晴らしいゲームでした。だからこそ終わるのが寂しい。今のチームでもう少しサッカーを続けられたら、みんなもっとうまくなる。そう思うと優勝してうれしいと言うよりも、寂しいなという感じです」(吉永コーチ)というまでに。この3年間、順風満帆ではありませんでしたが、彼らが決してサッカーから逃げずに、毎日練習に励んできた成果が国立で実を結びました。

 大会前から、サッカーaiでは取材を続けてきましたが、いつも明るく、練習中でも笑顔が絶えることはありません。「試合前も緊張はほとんどしない」という彼らは、決勝前日の公開練習でもいつもと変わらぬ様子で自然体でトレーニングに励んでいました。新しいスローインの方法を考えようと、試行錯誤する余裕!?

 も見せていたほど。準決勝前も同じようにリラックスしていた彼らですが、決勝戦の前、アップをする彼らからこれまでなかった良い緊張感が。横森監督が準決勝を前に「この大会の中でも生徒が成長している」と話していましたが、まさにそれは彼らがチームとしても1人の選手としても、大きく成長した証。この選手権で最もチームとして成長し、最後までサッカーを楽しんだのは、間違いなく山梨学院大付でした。(サッカーai編集部・阿部菜美子)