<サッカーai:山梨学院大付1-0青森山田>◇11日◇決勝◇国立

 試合終了の笛が鳴り響いた瞬間、山梨学院大付の選手たちが喜びを体いっぱいで表すかたわらで、呆然と立ちすくしていた青森山田の選手たち。立ち上がり早々に1点を決められ、ハーフタイムには黒田剛監督から「青森山田らしいサッカーをやろう」と送り出され、何度か得点チャンスを作りながらも、山梨学院大付のゴールネットを揺らすことはできませんでした。

 キャプテンのMF椎名伸志はこの日も通常の倍の痛み止めを打って試合に出場。昨年8月に負った左ひざ前十字じん帯断裂からわずか4カ月で復帰。今大会では毎試合自分の足と相談しながらプレーしていました。目の前にある一戦一戦に集中し、チームメートに自分がケガをしていることを感じさせないよう配慮し、「この試合で(足が)潰れてもいい」という並々ならぬ決意を持って、ピッチに立っていました。決勝戦では左足だけでのジャンプができず、踏ん張りがきかない中でのプレーを強いられましたが、「これが今の自分の実力」とキッパリ。決してケガを言い訳にすることはありませんでした。

 スポーツ選手には、本人も予期せぬタイミングで、とんでもないアクシデントに見舞われることがあります。もちろん、ケガがないことが一番ですが、大切なことはいかに気持ちを切りかえて、復帰に向けて前向きに臨めるかということ。椎名にとっては「選手権」という存在が、気持ちを前向きにさせてくれた大きな要因でしたが、何よりも、その精神的な強さが彼をここまで導いたはず。サッカーの神様も、椎名なら乗り越えられると考え、あえて試練を与えたのでは?

 と感じるほど、ベストコンディションからは程遠くても、その存在は輝きを放っていました。

 この大会、オレンジのキャプテンマークには「全国制覇」、「恩返し」という文字を書きこみ、腕に巻きつけ試合に臨んでいました。自らのケガがありながらも、その中でチームの誰よりも大きな声で仲間を鼓舞し続けていたキャプテンの真摯な姿は、確実に後輩たちにも伝わったはず。全国制覇の夢を後輩に託し、活躍の舞台を大学に移し、椎名はプロを目指して新たなスタートを切ります。(サッカーai編集部・石井宏美)