<高校サッカー:大分3-2市西宮>◇5日◇準々決勝◇埼玉

 公立旋風を巻き起こした市西宮(兵庫)が大分に逆転負けを喫し、ベスト4進出を逃した。序盤にMF後藤寛太(3年)の3試合連続ゴールなどで2点を奪ったが、試合終了間際に勝ち越し点を許した。県内有数の進学校で、3年生はきょう6日から勉強1本に切り替え、受験での国立行きを目指す。4強には大分、市船橋(千葉)、尚志(福島)、四日市中央工(三重)が進出。準決勝は7日に国立で行われる。

 2点のリードを守ることはできなかった。文武両道を掲げ、無名の公立の星として全国初出場での国立を目指したが、得意のPK戦に持ち込むことはできなかった。終了の笛が鳴ると、選手たちは顔を覆ってピッチに倒れ込んだ。

 それでも、全国の舞台で市西宮の名を刻んだ。先制後の前半13分にはMF後藤が右足で大きな弧を描く約25メートルの技ありのシュート。C大阪がマークし続けてきたエースは大会通算4点目となる3試合連続ゴールでセンスの片りんを見せつけた。セットプレーから2点を許し「2点取って勝ったと思ってしまった。一度気が緩むと、もう戻らないんですね」と笑顔はなかったが、激戦区兵庫を勝ち上がり、全国でも2勝をあげてのベスト8は十分胸を張れる結果だ。

 学校の規則で練習は1日2時間。遠征も3泊までしか認められず、県外の強豪校との練習試合が制限され、経験を積めなかったことが、最後に大きなハンディとなった。大路照彦監督(49)は「早くに点を取って、ベンチも選手も経験の無さが出てしまった」と涙を見せた。それでも「人生の中でなかなか経験できない瞬間を味わわせてもらった。(自分は)男前なんですけど、本当の意味で男前にしてくれて感謝している」とジョーク交じりに選手たちをたたえた。

 選手層が薄く、高熱を押して試合に出続けた主将のDF帷(かたびら)智行(3年)も「ベスト8を誇りに思いたい。これを財産にこれから生きていきたい」と3年間を振り返った。

 3年生9人は全員が国公立大への進学を目指しており、今日6日に兵庫に戻った後は、14日のセンター試験に向けて、受験勉強に専念する。後藤は「明日からは勉強に集中します。今からでは間に合わないけど、2つ目の目標やから」と、プロへの夢をひとまず胸の中にしまい、受験生の顔へと戻った。

 勉強とサッカーを3年間両立することで培ってきた集中力は受験勉強でも必ず生きる。市西宮イレブンはサッカーでの国立切符は逃したが、受験生としてもう1つの国立という大きな夢をつかみとる。【福岡吉央】