全国高校サッカーは今日5日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場ほかで準々決勝が行われる。作陽(岡山)は、野村雅之監督(46)がタブレット型の先端機器「iPad」を駆使し、2回戦で富山一、3回戦で滝川二を攻略。プロ野球「野村ID」ならぬ野村ITで、6年ぶりの国立切符を狙う。

 野村監督はバッグに黒のiPadを忍ばせる。4日の練習中に取り出すことはなかったが、戦術確認やミーティングでは欠かせないものだ。手書きノートアプリ「Note

 Anytime(ノートエニタイム)」をインストールし、選手名やピッチの画像を登録。タッチペンで自在に使いこなす。「ノートの進化形。パソコンのほうがいろいろ使えるけど、ベンチには持ち込めない。iPadなら持ち込めるのが強み」と話す。戦術ボードやノートよりも、かさばらずに過去の記録を残せる利点もある。

 使用開始はわずか3カ月前。だが効果はてきめんだ。初戦の富山一戦前のミーティング。相手のコーナーキックの映像を取り込み、守備陣の配列を確認した。空いているスペースがないか、警戒する選手はだれかなど、DVDよりも手軽に実際の映像を見られるのは大きい。取り込んだ画像に、文字などを手書きできる機能をフル活用する。

 試合中もベンチに持ち込むが、通信機能は使用しない。交代選手への指示やこれまでの記録をノートがわりに使う。4強をかけて戦う桐光学園も“丸裸”。「奇策などはなくオーソドックスだけど、きっちりとしたサッカーをする」(野村監督)と分析済みだ。

 8年連続21度目の出場。パスをつなぐ伝統のスタイルを踏襲し、先端技術を導入した。高校サッカー界のノムさんに率いられ、過去最高だった06年度の準優勝を超えるべく、まずは国立行きをかけた戦いに挑む。【高橋悟史】

 ◆iPadを使用する監督

 ロンドン五輪で銅メダルを獲得した、日本女子バレーの真鍋監督が有名。過去のデータだけでなく、行われている試合中のデータも入れた。日本チームで調子のいい選手にトスを集めるほか、レシーブの苦手な相手選手を狙うなど、リアルタイムのデータをもとに具体的な指示を送った。J1清水のゴトビ監督も使用する。ハーフタイムに前半の映像を見せて、戦術の確認をする。戦術確認用のアプリもあり、iPad2のCMにも登場していた「サッカーコーチのクリップボード」などがある。