<高校サッカー:桐光学園2-1作陽>◇5日◇準々決勝◇ニッパ球

 桐光学園(神奈川)が、劇的なロスタイム弾で作陽(岡山)を振り切った。1-1で迎えた後半終了間際、FW野路貴之(3年)が値千金の決勝点を奪った。「天才司令塔」MF中村俊輔(34=横浜)を擁して準優勝した1996年(平8)度の大会以来、16大会ぶりの4強入り。神奈川県勢初の頂点まで、あと2勝と迫った。12日の準決勝(東京・国立競技場)は鵬翔(宮崎)-星稜(石川)、京都橘-桐光学園となった。

 桐光のエースとして、きっちり「80分」で勝負を決めた。後半のロスタイム突入から3分がすぎ、PK戦は目前。野路は右からのロングスローをゴール前、左サイドで待ち受けた。空中戦から目の前に転がったボールを、無我夢中でシュート。応援団の大声援を背に放った一撃がゴール左端に突き刺さる。土壇場で、チームを国立へと導く決勝弾となった。「何にも変えられないぐらいうれしい」。ほおを赤らめ、今大会3点目の余韻にひたった。

 試合前、佐熊監督から「今日は決めそうだな」と声をかけられたが、2度の好機にシュートミス。「交代も考えたけど我慢した」という指揮官の期待に、最後の最後で応えてみせた。決勝点が飛び出す直前、作陽はPK戦を見据えてGKを交代させた。「(代わったばかりで)相手のキーパーはやりづらいはず。だから絶対シュートで終わるつもりだった」と野路。ラストチャンスを逃さず、狙い通りに締めくくった。

 失いかけた信頼も取り戻す一撃だった。東京、柏などJクラブの下部組織の猛者も集うプリンスリーグ関東1部で16ゴール。得点王の称号を引っさげ、初戦の2回戦(対四日市中央工)では2得点と幸先のいいスタートを切った。打って変わり、3回戦(対佐賀商)は地獄を見た。4度の絶好機がありながらも無得点。1対1の状況も相手GKの好セーブに泣いた。「みんなにいじられましたよ」。今では笑い話だが「何で落ち着いて打てなかったんだろう」と悔やんだ。この日は控え部員に「今日は決めてやるよ」と自身にも言い聞かせるように宣言。予告通りにネットを揺らした。

 16年ぶりの4強入りで、偉大なOBの背中をとらえた。「(中村)俊輔さんたちは準優勝。自分たちは日本一になりたい。個人的には得点王も狙いたい」。国立を沸かせるゴールを連発し、頂点まで駆け上がる決意を示した。【湯浅知彦】

 ◆野路貴之(のじ・たかゆき)1994年(平6)9月14日生まれ、横浜市青葉区出身。小学時代に所属した田奈SCで本格的にサッカーを始める。中学時代は横浜ジュニアユースでプレー。桐光学園では昨夏の高校総体8強入り。卒業後は神奈川大へ進学予定。目標とする選手はJ1広島FW佐藤寿人。家族は両親、兄、姉。172センチ、64キロ。血液型A。