<第2部国立で輝く男たち(3):市立船橋MF石田雅俊>

 高校2冠へ。優勝候補筆頭の千葉・市船橋MF石田雅俊(3年)が、船橋市の非公認ゆるキャラ、ふなっしーばりの脱力系シュートで有終の美を飾る。今季全国総体で優勝に導いたエースは、プリンスリーグでも19点を挙げ得点王に輝き、同校初のプレミアリーグ参入を決めた。自ら名付けた「ふんわりミドル」で最後の国立に花を添える。

 手応えをつかんだのは11月9日、千葉大会準決勝の千葉国際戦だ。「イメージ通りに打てれば入る。これで行こうと決めていた」と、ペナルティーエリア外でボールを受けると、DFを1人かわして即シュート。その素早い動きに反して、パスにも見えるフワリと浮いたボールに、GKの反応が一瞬遅れた。必死に伸ばした腕をあざ笑うかのように、ボールは優しくゴールネットを揺らした。

 勝利のために、進化し続ける。10月のプリンスリーグ大宮ユース戦で、初めて徹底研究された。DFが敷く布陣に、得意のドリブル突破や裏への抜け出しが封じられ「こじ開けられないこともあるし、パスも通りにくい」。新たな攻撃パターンの必要性を痛感した。

 そんなとき、思わぬところからヒントを得た。ゴールバーにボールを当てる遊びだ。石田は「あれでシュートの感覚をつかんだ。3度に1度は当てる自信がある。簡単ですよ」と笑う。21日の東京代表修徳との練習試合でも、試合終了間際の初シュートで決め、精度の高さを証明。新たな武器を手にした瞬間だった。

 天性の感覚で、ボールを受ける前からゴールまでの流れをイメージできる。朝岡隆蔵監督(37)も「石田は別の世界を見ている。将棋で言えば3手先。彼の独特の間やリズム、アイデアに何度も鳥肌を立てた。あれは教えられるものじゃない」と絶賛するほど。その実力が認められ、J2京都入りも内定している。

 2年前に全国制覇した際はベンチ入りも、国立では不出場。「選手権での活躍がプロの土台になる。最後の国立で優勝して土台を作りたい」と思いは強い。全国総体優勝後、梨100キロを差し入れし祝福してくれたふなっしーは、破竹の勢いで全国区に上り詰めた。「意識はしないけど、僕らも続けるように」。夏の王者は、負けじと一気に頂点に駆け上がる。【桑原亮】

 ◆石田雅俊(いしだ・まさとし)1995年(平7)5月4日、千葉・八千代市生まれ。6歳からサッカーを始め、小5で愛知県に転校後、中1から名古屋ジュニアユース入りし、全国優勝を経験。市船橋では1年からベンチ入り。ポジションは左サイドハーフ。好きな選手は日本代表FW香川真司。178センチ、70キロ。家族は両親と姉。