全国高校サッカー選手権で、北陸勢が不名誉な記録の打破に挑む。過去6度の国立挑戦はいずれも敗戦し「唯一の未勝利地域」となっているが、今大会は富山第一(富山)、星稜(石川)がともに3度目の4強入り。北信越から初めて2校同時に名を連ねた勢いで、国立初勝利を目指す。

 富山っ子が台風の目となる。富山第一は今大会、堅守速攻から4戦11得点(4失点)で最多得点。大塚一朗監督、翔主将の親子鷹でも注目される。富山では県外へ有望選手が流出している現状だが、大塚監督は「うちは富山の子で勝つ」と「地元密着主義」で臨む。

 04年、英国で指導者ライセンスを取得した時に学んだことがある。プレミアクラブの育成世代では、自宅から1時間以内で通えることが所属条件の1つ。「18歳までは家族と一緒に過ごす時間を大切にすべきだ」という考えに共感し、導入。「応援してくれる人がいることを忘れるな」と感謝の気持ちもすり込んだ。

 本年度はトップリーグ「プレミアリーグWEST」で残留を決めた。要因は自主性。08年に大塚監督がコーチ就任するまでは、基礎練習を反復していたが部員は約100人の大所帯。約3時間の全体練習では戦術理解に集中し、技術練習はコーチの助言を受け各自行う方針に変えた。冬場は50センチ超の積雪。練習は体育館で朝7時から1時間のみだが、各自が課題を改善した。

 毎年夏には、障害者団体とサッカー交流も行い、大会前にはミサンガをプレゼントされた。選手の人としての成長を喜ぶ指揮官は「流出を防ぐためにも、負けるわけにはいかない」。快進撃を続ける富山第一が、北陸に恩返しする。【桑原亮】