【ドーハ(カタール)=5日】日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督(57)が、アジア杯(7日開幕、カタール)に向け、「良いチームから真のチームへの進化」をテーマに掲げた。4日の練習後に宣言した。岡田ジャパンは昨年の南アフリカW杯で、対世界を見すえて大会直前に戦術を大胆に変更し、結果を残した。だが、ザックジャパンは「最大のリスクはリスクを負わないこと」という就任直後からの合言葉を胸に、アジア杯での激戦を勝ち抜き、対戦相手に左右されない真の強者への脱皮を図る。

 気温18度。薄暗くなった中東の地で、ザッケローニ監督がいつも以上に強い口調で言い切った。「(アジア杯を前に)大切なのは私の経験を選手に伝えること。それを吸収してくれれば、選手はさらに成長できると思う。今は良いチームから真のチームに生まれ変わる途中なのです」。

 単なる良いチームから真のチームへ進化する通過点が、アジア杯だ。選手には3日のミーティングで優勝を厳命したが、当然「私の頭の中には、勝つということ、早い成長というのがある。(今回は)若い選手を多く招集した。この選手が育てば14年W杯にいい形で臨める」との狙いもある。

 真のチームとは何か-。指揮官の胸中には思い描くイメージがある。

 ◆勝者のメンタリティー

 就任当初から選手に「最大のリスクとはリスクを負わないこと。だからリスクを負わなければならない」と言い続けている。相手を尊重しながらも、恐れない精神。常に勇気を持ち、リスクを負い攻める姿勢を示す勝者のサッカー。

 ◆対戦相手に関係なく、揺るがない日本サッカーの構築

 普段から「相手よりも自分たちのサッカーをすることが大事」と話す。自身が所属したACミラン、3-4-3のモデルにしたバルセロナも相手にかかわらず、自分たちのサッカーを貫く。だからこそ、ザッケローニ監督は常に対世界を見すえた揺るぎない日本サッカーの構築を目指す。

 岡田ジャパンのW杯前後の状況は既に把握している。どん底状態、戦術変更、選手の一致団結…。紆余(うよ)曲折の末に結果を残したが、14年ブラジルW杯に向け、ザックジャパンはアジア杯を勝ち抜くことで不動のサッカーを作りあげる。それが、「真のチーム」への進化につながる。

 4日の練習では4バックの練習を行ったが、4-3-2-1、4-3-3、3-4-3を変幻自在に使い分け、布陣変更で「試合の流れを劇的に変える」のもザックジャパンの特徴になる。勝者のメンタリティー、揺るぎない自分たちのサッカー、そして柔軟性。「真のチーム」への進化が9日の1次リーグ初戦ヨルダン戦から始まる。【菅家大輔】