【ドーハ(カタール)=27日】真司の魂、ドーハに置いていきます-。25日韓国戦で右足小指付け根を骨折した日本代表MF香川真司(21=ドルトムント)が、チームを離脱。骨折判明から一夜明け、所属チームの要請でドイツへ移動した。チーム関係者が今季中の復帰の可能性に否定的な見方を示すなど、重傷だったことも判明。ドーハ空港では無念の思いを明かしながら、日本の優勝を強く願った。オーストラリアとの決勝は29日(日本時間30日午前0時)。香川の思いも背負い、全員で2大会ぶり4度目の優勝を勝ち取るだけだ。

 悔しさを必死にかみ殺していた。ドーハ空港に到着した車の中で、香川はうつむいていた。決戦を前に、ピッチに立てなくなった無念…。それどころか、喜びすら一緒に分かち合えなくなってしまった。放っておけば、どうしても下を向いてしまう。それでも香川は必死に前を向き、アジアの頂点を狙う仲間を信じた。

 香川

 やっぱり最悪なケースで、すごく悔しいですけど、チームは決勝までいってくれたし、優勝してくれると信じている。あと1試合、自分たちのサッカーをやってほしい。楽しんでやれば、絶対に勝てる。

 両脇で抱えるように持つ松葉づえで、細身の体を支える。水色の靴下で覆われた足は、サンダルからはみ出していた。心身ともに痛々しい姿で「歩いたら痛みがある」。所属チームの強い要請で、ドイツへ戻ることになった。

 負傷したのは、25日の韓国戦だった。後半途中に「衝撃がすごかった」と激痛が襲った。右足小指の付け根付近は、09年11月に手術したことがある古傷。「ちょっとヤバイな」という直感は、最悪のものとして当たってしまった。

 香川

 手術するかも未定だし、ドルトムントでドクターなどと相談してからです。前にも同じところをやっているので。シーズン中なので早く決断して1日でも早く復帰したい。

 サッカー選手は疲労性の第5中足骨骨折が多く、治りにくい。過去の例を見ても全治4週間、手術すれば復帰まで3、4カ月かかることが多い。27日付のドイツ・ビルト紙は、香川の代理人の「ドイツでの治療を予定しているが、今季復帰は絶望的だろう」とのコメントを掲載。チーム幹部も「シーズンは残り3カ月半で終了するが、復帰は厳しそうだ」との見解を示した。Jリーグのあるトレーナーも「完全に折れたり、疲労性もあれば、3カ月はかかるだろう」と証言する。

 今大会は初めて背番号「10」を背負った。1次リーグで精彩を欠きながら、準々決勝カタール戦では2度の同点弾。苦しさも悔しさも味わいながら壁を乗り越え、最高の舞台にたどり着いたばかりだった。

 香川

 (10番は)誇りに感じるし、結果を求められる番号。そういう意味でも物足りない。まだまだ自分は代表で1人の選手。まだ成長する必要がある。

 骨折が判明した26日の夜。香川は夕食会場で「頑張ってください」と優勝を託した。部屋を訪れた長友には「俺の魂、置いていくから」と言った。「カズさんやあるまいし、カッコつけすぎですよね。でも明るく振る舞おうとしたアイツのためにも、ね」と長友。グラウンドでは頼れるエース、ピッチを離れればかわいい弟だった最年少の21歳。「誰が出ても結果を残してくれる」とカタールに魂を残していった香川に、イレブンは勝利で応えるしかない。