世界連覇と連続V弾を狙う。なでしこジャパンのDF熊谷紗希(24=リヨン、札幌真駒内中出)が、6日からカナダで行われる女子サッカーW杯に臨む。前回の11年ドイツ大会では全6戦に出場し、決勝戦では優勝を決めるPKを決めるも、12年ロンドン五輪では決勝で米国に敗れ準優勝。欧州リーグ移籍で得た経験を武器に、宿敵米国への雪辱と、世界一奪還に挑む。

 熊谷が、なでしこジャパンの核として、2大会連続の頂上を目指す。20歳で臨んだ前回大会から4年。若手として澤、川澄ら先輩選手に引っ張られた当時と、立場は変わった。「もちろん狙うのは世界一。ひとつひとつ勝ち続けていく先に見えてくるのは優勝だと思うし、間違いなくチームとして目指すところ」。今大会は、けん引役としてもチームを支え、心身ともに日本の壁として奮闘する。

 11年7月17日、ドイツ大会決勝では、PK戦で優勝を決めるキッカーとなり一躍、時の人となった。2大会連続の“V弾”も狙うところ。「前回大会は、たまたま自分が最後のPKだったというだけですが、また決めたい気持ちはある。得点のチャンスは常に狙っていきたい」。前回大会は流れの中では無得点も、2度目のW杯は、守備だけでなく、勝負どころの一撃も視野に入れる。

 12年ロンドン五輪は、決勝で米国に敗れ、世界一の座を奪われた。その後、13年に欧州屈指の強豪フランスのリヨンに移籍。今季は22戦全勝でリーグ9連覇に貢献した。国内では圧倒的強さを誇るチームの中にあっても、おごることなく、常にテーマを持って戦ってきた。「レベルの差があり、守備でチャレンジする場面は少ないが、攻撃で、いかにいいボールを入れるかなど、考えながら臨んできた」と言う。

 日々の練習も、進化の糧にしてきた。チームメートにはフランス代表の“女ジダン”ことMFネシブやスウェーデン代表の“女イブラヒモビッチ”ことMFシュリンがいる。女子欧州CLも経験し「一番成長したのは読み。選手の特徴をある程度知って癖なども頭にある中で戦える」と、4年間の海外経験を生かす。

 まずは、8日(日本時間9日)初戦スイス戦での1勝。中心選手のMFディッケンマンはリヨンの同僚でもある。「チームメートもいるし、成長しているチーム。何より初戦は大切な一戦。そこを勝つことで次につながる」。慎重に踏みだし、あくまで挑戦者の気持ちで1歩ずつ、勝利を積み上げていく。【永野高輔】

 ◆熊谷紗希(くまがい・さき)1990年(平2)10月17日、札幌市生まれ。札幌真駒内南小3年時にサッカーを始める。宮城・常盤木学園高では1年からレギュラーで、3年時は主将。09年筑波大進学と同時に浦和レッズレディースに所属。11年にドイツ1部フランクフルト移籍、13年からフランス1部リヨン所属。家族は両親、兄。171センチ、59キロ。

 ◆11年ドイツW杯と熊谷 6月27日の1次リーグ初戦ニュージーランド戦(2-1)から、7月17日の米国との決勝戦まで全6試合にフル出場。決勝は延長戦の末2-2と決着つかずPK戦に突入。米国は1人目から3人連続で失敗。米国4人目のワンバックが決め2-1となり、日本の4人目を務めた熊谷が決めた時点で、日本の初優勝が決まった。