川崎FのFW大久保嘉人(33)が、ハリルジャパンで4試合無得点の日本代表FW香川真司(26=ドルトムント)に「ストライカーのエゴ」を伝授する。W杯アジア2次予選初戦のシンガポール戦から一夜明けた17日、大久保は、近日中に香川と会うと明かし、自身の経験を踏まえて助言する意向を示した。波に乗れない日本の背番号10のために力を貸す。

 大久保は、弟分香川の精神面を心配している。シンガポール戦では先発して3本シュートを放つもゴールは奪えず、後半16分には最初の交代メンバーとなって退いた。日本代表でのゴールは1月のアジア杯・ヨルダン戦から5試合遠ざかる。ハリルジャパンでは4試合無得点で、最近3試合は後半の早い時間帯での途中交代が続いている。

 この日、川崎Fでの練習を終えた大久保は、06年のC大阪時代からかわいがっている後輩のプレーについて、こう言った。「迷うことはない。ストライカーのエゴを持って(シュートを)どんどん打っていいと思う」。近く会う予定があるといい、周囲を気にしすぎず、エゴイストになれと説く意向を明かした。

 ちょうど1年前のW杯期間中には、風呂に誘って「とにかく笑えよ。いつまでも引きずっていたらダメや」と激励するなど、折を見て助言してきた。2年連続Jリーグ得点王は獲得したが、ゴールから何試合も遠ざかった経験がある。だからこそ気持ちが分かる。積極的にシュートを打っても、ゴールの枠内に飛ばないと「焦っている」と見られることも分かる。

 だが、「そんなの関係ない。シュートを打たなければ入らない」と打ち続けるしかないと、開き直って結果を残してきた。「いつか入るから。自己中になるぐらいやってもいい」と力を込めた。

 前夜、香川は「最後のペナルティーエリアでもっと決定的なチャンスを生み出す個の力の向上をしていかないと」とコメントした。大久保には弱気になっている様子が垣間見えたという。弱気が一番の敵。世界レベルの突破力と技術を生かして再び輝けるよう、大久保は日本の背番号10に強気な姿勢を注入する。【岩田千代巳】

 ◆風呂会談 大久保は昨年6月のW杯ブラジル大会1次リーグ初戦のコートジボワール戦後、イトゥ市内の日本代表の合宿施設にあった風呂に香川を誘った。長友と3人で湯船につかって「この前はマジで全然ダメやったな。ほんまにダメやったけど、まあ落ち込むなよ。とにかく笑えよ。切り替えろ」と“ダメだし”した上で、次戦に集中するように訴えた。