連覇に挑むなでしこジャパンの佐々木則夫監督(57)が、決勝進出への自信を示した。日本(FIFAランク4位)はオーストラリア(同10位)に勝利し、2大会連続の4強入りを決めた。7月1日(同2日午前8時開始)の準決勝で、過去2分け2敗のイングランド(同6位)と対戦する。ピリピリムードだった指揮官が笑顔を取り戻すなど、なでしこが波に乗ってきた。

 佐々木監督は準決勝を飛び越え、決勝進出を思い描いているかのようだった。試合後の会見で「日本の皆さんに、11年のドイツで、感動、元気、勇気を与えられたことと同じように結びつけられたら幸せ」と笑みを浮かべた。準決勝の開催地はエドモントンだが、「今度はバンクーバーで待ちかまえられる。あっ、エドモントン」。思わず決勝の地が口をつくほどだった。

 決勝トーナメント1回戦のオランダ戦後はピリピリしていた。中3日の準々決勝への重圧からか、選手への取材を自ら強制終了するほどだった。だが、選手たちはそんな不安をみじんも感じさせなかった。中5日のオーストラリアを運動量で上回った。味方がボールを持てば周囲が動いてパスコースをつくる。守備への切り替えも速かった。「(30度以上の)暑さの中であれだけ動いているのが強み。根気強い、なでしこのサッカーが実を結んだ」と誇らしげだった。

 4強の中で、1次リーグから5連勝は日本だけ。過去6大会を通じても1点差の全勝での4強入りは史上初。準決勝までの全得点をすべて異なる選手が決めたのも史上初だ。「シビアな1点差で勝ってきたことが、チーム力をみるみるうちに成長させているのは間違いない」と自信は揺るぎない。主将宮間も「誰が点をとっても守っても結果を出せる」と力強かった。

 右膝負傷で出場が危ぶまれながらメンバーに入れた岩渕が、途中出場3試合目でW杯初得点。名前の真奈(まな)にかけて「マナかな、マナかな、と思ってずっと待っていたんですけれど、やっと決めてくれた」と得意のジョークまで飛び出した。外国人記者から「岩渕は得点をとるのに、そんな時間がかかったのか?」と聞かれ、「まだかと、マナか、をかけたんですけどね」と苦笑い。ノリさんらしさが戻ってきた。

 4年前は1次リーグを2位通過するなど伏兵だったが、今回は優勝候補として厳しくマークされる中、堂々と勝ち進んできた。準決勝の7月1日はカナダの建国記念日。「満員の中でやりたい」。前回ドイツ大会で唯一黒星を喫した相手にリベンジの舞台は整った。【鎌田直秀】

 ◆1大会7人7発 日本が女子W杯史上初の複数得点者なしで準決勝進出を決めた。過去の女子W杯で1大会7人がゴールは延べ8チームあるが、いずれも計10得点以上を挙げ複数得点者が1人はいた。今回の日本のように7人すべて1ゴールというケースは例がない。1大会8人以上が得点は延べ10チーム。99年のロシアが8人で10得点。なお1大会最多得点者数は10人で99年の米国(17得点)と03年のドイツ(25得点)。4強入りした今大会のドイツは9人で20得点。

 ◆5戦連続1点差勝ち 1次リーグから1点差での5連勝はW杯史上最長記録。4連勝時点ですでに史上初のことで、記録をさらに更新した。